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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

卒業して薬局で臨床業務に取り組むようになって1年が経ちました.

この1年で読んで勉強した参考書すべてをもう一度(ざっと)読み返し,いろいろな知識と1年分の経験が身についたうえで,改めてレビューをしなおすことにしました.

レビューをしなおすのに必要な分ではありますが,もう一度買った参考書全てを読み返したので,この記事1本書くために丸2ヶ月かかりました(笑)

それだけ本気でレビューをしなおしたので,たくさんの方の参考になればと思います.


本のタイトルがリンクになっているものは,以前に参考書レビューで取り上げたものです.細かい評価や,初めて読んだ時の感想を読みたい方はぜひリンク先の記事もご参照ください.


では,参ります.





第1位:フレーム法で、もうコワくない 総合内科 ただいま診断中



この1年で最も読み返した頻度の高かった本だと思います.

卒後1年目の新人薬剤師から,病院から薬局へ転職される方にも間違いなくオススメです.個別レビューでも書きましたが,私が薬剤師業務で最も大切だと考えている「監査力」を身に付けるのに大いに役立つ1冊です.

「フレーム法」と「Red flag」の考え方というシンプルでありながら汎用性の高い勉強方法で,無限に思える患者主訴から,的確に病態を紐解いていく考え方は素晴らしいです.

この知識をもって「今日はどうされましたか?」と聞くのと,ただ何となくルーチンで聞くのでは天と地の差が出ます.

当たり前ですが,気付けなければスルーしてしまう主訴や症状に気付くことができるようになって,そこからより適切な治療薬へ変更して良くなった,なんて薬剤師業務の1番のやりがいを感じる経験が出来たのもこの本のお陰だと思っています.まさに必携といえる1冊です.




第2位:ジェネラリストのための 内科外来マニュアル



1位にするかめちゃめちゃ悩んだ1冊です.ただ初学者には1位の本の方がとっかかりやすいかなという理由で2位にさせていただきました.

1位の本は主に「考え方」を学ぶ本ですが,本書はそれを身に付けた後に,実際にさまざまな主訴から実践的に鑑別を絞り込んでいく力を身に付けることができる本です.

また,薬局でメインとなる継続外来の患者への評価の仕方は本書が断トツで優れています.

初版を薬局実習で使って以来,ずっと手元において読み込んできた参考書です.

ただいま診断中で「フレーム法」と「Red flag」を身に付けて,本書でよりブラッシュアップした初診外来と継続外来での考え方を学べば、ある程度のケースはミスなく対応できるようになります.

薬局外来を行うに当たっての最低ラインはこの上位2冊を理解していることかなと感じています.




第3位:Dr.ウィリス ベッドサイド診断





ある程度の症候学や診断学を学んで,参考書も何冊か勉強してきて「ある程度の知識が身についてきたな.もう大体どんな症状や主訴を聞いても評価できるようになってきたぞ」と,今思えば少し傲慢な考えを持つようになっていた私をぶちのめしてくれた良書です.

本書を読み始めて,ある程度勉強してきたはずなのに,一体今までの自分がどれだけの症状や所見を見逃し続けてきたか,得られた情報をどれだけ活かしきれていなかったかに驚きました.

上位2冊で学んだ後に,もっと深くそれぞれの症状や所見を理論的に学ぶのに最適です.

読破して勉強するのは大変ですが,投薬時の問診で疑問に思った症状や主訴をあとで読んでみて,そうやって評価するのか!とかそういう意味のある症状だったのか,じゃあ次回はこれを確認したほうがいいな.という風に勉強するのがオススメです.

薬物治療を考える上で不可欠な病態を,薬局という制限の多い空間で病歴と身体所見から紐解いていく力を身に付ける最高の参考書です.上位2冊を読破した後は絶対にお勧めです.




第4位:ホスピタリストのための内科診療フローチャート





私はめちゃめちゃ処方提案する薬剤師なのですが,私が提案する処方の方が良いですよ!と処方医に示すための証拠というか,根拠となる文献を探すのによく参照しています.

EBM全盛の医療において,やはり質の高い論文や研究を根拠に処方提案ができたら素晴らしいですよね.そのうえで経験的な要素や,実臨床ではこうすると上手くいくという情報も持っていたら鬼に金棒です.本書はEBMがぎっしり詰まっている上にクリニカルパールも随所にあり,1ページ1ページの質の高さに圧倒されます.

ある程度の知識を身に付けてからじゃないと,本書を100%活用するのは難しいかもしれませんが,根拠として示されている文献まであたって勉強するとものすごく知識が深まります.

個別レビューを書けていなかったので,近いうちに書いてリンクに貼っておきます.




第5位:ジェネラリストのための内科診断リファレンス




1つ1つのボリュームはフローチャートに軍配が上がりますが,網羅性の高さと,何より記載されているエビデンス量に関しては本書のほうが,というより今まで読んできた中で最もEBMに基づき,最もエビデンスの豊富な参考書ではないかと思います.

疾患に対して,重要な臨床情報,臨床所見は何なのか.そしてそれがどの程度の診断価値を持つものなのかが明確に数字で示されているので,とてもインパクトがあります.

この本も処方提案のエビデンスづくりに重宝しています.

表やグラフが多い点もポイントで,視覚的に理解するほうが頭に入るんだよなって方にも間違いなくオススメですね.




第6位:トップジャーナルから学ぶ 総合診療アップデート





個別レビューにも載せましたが,論文をベースに勉強したいけど英語で読みたくないというワガママに答えてくれる名著です.

そして分厚い本なのにスイスイ読めてしまえるほど,読み物としても素晴らしい参考書です.

必須とか,必ず知っておくべき!というスタンスより,こんな研究があるんだよ,とかこんな治療が実は世界スタンダードなんだよ,というのを知る目的で読む本かなと思います.

それでも読んでいるとハッとさせられることも多く,間違った治療を見逃して通してしまっていたなと反省することも多かったです.




第7位:キーワードから展開する 攻める診断学




ちょっとテイストの変わった参考書というか,今までベースにして勉強してきた参考書には載っていないものも取り上げてくれる参考書というイメージです.

まさに痒いところに手の届く本.という立ち位置ですね.

レジデントノートの増刊版ということもあって,そんなに難易度が高いわけでもなく,たぶん薬学生レベルから読みこなせる本だと思います.解説も充実していて読みやすいです.

「見逃してはいけない疾患」と「よくある疾患」の鑑別を付けられるようにするのは,薬剤師として臨床で勤務する上で間違いなく必須のスキルですが,体系だって学ぶことが少なかったと思うので,学生の副読本としても良いかもしれません.




第8位:もう困らない 救急・当直ver.3




病院勤務の方や,救急の場で働いている薬剤師であれば間違いなくトップである参考書ですね.

発熱や咳,痰という毎日診る症状から失神や痙攣,胸痛,急性腹症などのemergencyな症状まで幅広く網羅して学ぶことができるので,薬局薬剤師にも十分に勉強する価値がある内容です.

薬剤師として,必ず気付けなければいけない緊急度の高い疾患を間違いなく否定すること.その上でアンダートリアージとならない治療を行う力を身に付けることができます.

医療に100%は絶対にないので,なるべく拾い上げる網を細かくする努力は医療者全員がすべきです.

薬剤師も薬物治療を行う最後の監査役として,最も目の細い網になれるよう本書で勉強するのは間違いない選択肢だと思います.




第9位:診察エッセンシャルズ




症候学や診断学を学んで鑑別疾患を想起できるようになっても,成書で確認しないとなかなか不安は取り除けませんよね.

すぐに確認したくても,成書を持ち歩くのは現実的ではありませんし,白衣のポケットサイズの本があればいいなと思っている方にぴったりの1冊です.

鑑別疾患ごとの典型的な経過や,その症状がこういう病歴を辿って発症していたらより疑わしいだとか,ほかにこういう症状も出ていることが多いよ.などの解説が細かく示されています.

若干,表現が分かりにくい部分もありますが,それでもこのサイズでこの充実性は間違いなく買いの1冊です.




第10位:極論で語る総合診療




万遍なく全身の薬物治療を勉強する薬剤師として,特に新人のうちは学ばなければならない事が膨大にあります.そこで,まずは頻度の高い疾患に対してしっかり対応できるようにする事が大切ですよね.

診療科を限定せずに,どんな診療科から患者さんが来ようと,完璧な薬物療法が提供できるようにすることが我々,薬局薬剤師の仕事です.

そういう意味で,いろいろな専門領域の最も頻繁に遭遇する疾患の薬物療法について学ぶことが,優秀で頼りがいのある薬剤師になる第1歩なんではないかと思います.

本書はそんな薬剤師になるために十分な知識を身に付けることができる1冊です.

なんというか内科外来診療の常識を身に付けることができる,というのが1番しっくりくる感覚だと思います.




第11位:よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!




コンセプトや内容は間違いなく初学者向けですし,そもそも薬剤師向けに書いてある本なので良いかなと思って購入しました.

基本的には薬局に来局した患者さんをOTC対応とするか,受診勧奨するかのトリアージを身に付ける力をつけるものです.

残念なのはほぼ全ての対応で「受診勧奨」が答えになっている点です.

薬剤師には適切な診療科に振り分けて受診勧奨させるということをして欲しい,という気持ちで書かれているからでしょう.

OTCや,薬剤師が処方できるBPCで対応できる疾患や症状についてスポットを当てた方が,より実践的で素晴らしい内容になると思いますが,薬剤師にそんなことができるなんてきっとまだ誰も思っていないので,しょうがないのかなとも思います.

ちょっと視点がずれているのが残念ですが,学べる内容としては間違いなく素晴らしいです.




第12位:内科診断学

内科診断学 第3版
福井 次矢
医学書院
2016-02-18



内容の充実性としてはもっと上位にランクインさせたいのですが,どうしても辞書的な活用の仕方しかできていません.

教科書として優秀なので,時間のある学生時代に読み込んだりするとまた評価は違うのかなとも思います.

今でも時々開いて,確認するのに使っています.




第13位:内科レジデントの鉄則




とても有名な本で,内容も文句なしの素晴らしいのですが,薬局薬剤師としてはどうしても優先度は下がってしまいます.

病院薬剤師であればトップ3に入る良書だとは思います.

基本的な入院管理下での内科全般を学ぶことができます.外来でも活用できる知識も身に付けられますし,基本的な治療のスタンダードを学べるのでさすが著名な参考書だけあるなという出来でした.

病院実習前の薬学生には絶対に読んで欲しいですね.




第14位:内科病棟・ER トラブルシューティング




内科レジデントの鉄則で基本を抑えた後に読むのにベストな参考書です.

より実践的で,トラブルシューティングと謳うだけあって「何かあったとき」「うまくコントロールできていないとき」にどうすればいいかを学ぶことができます.

薬剤師としては,そんなトラブルへの対応を知ることで未然にトラブルを防げるように目を光らせるのが本書の活用の仕方だと思います.




第15位:UCSFに学ぶできる内科医への近道





若干の内容の薄さはありますが,あまりたくさん成書とか読み込むようなガチの勉強はちょっと…という方にはいいかもしれません.

これ1冊で最低限の事はしっかりと網羅できているとは思いますし,エビデンスを大事にしながら臨床経験も織り込んで記載してある姿勢は素晴らしいと評価できます.

病院勤務で力を発揮できる1冊ですね.ポケットに入るのも評価できる点です.




第16位:総合診療・感染症科マニュアル




これも著名な参考書ですね.病院実習の際にかなり重宝しました.

白衣のポケットの中でも,胸ポケットに入るくらい小さい本です.しかし内容の充実性は素晴らしく,とても勉強になる話が満載です.亀田の精神が奥深くまで染みわたっている1冊ですね.

ただ小さすぎて読むのが大変なのが難点ですね.

医療を行う上での姿勢を身に付けるためにも一度は読んで欲しい参考書ではあります.




第17位:薬剤師レジデントマニュアル




レジデントマニュアルシリーズに薬剤師版ができた!と喜んで購入したのですが,事前の期待値が高かったせいもあるか,読んでみてがっかりした内容でした.

大学で学ぶ内容にすら達しておらず,学部教育以下の内容だったのが残念ですね.




第18位:薬剤師レジデントの鉄則

薬剤師レジデントの鉄則
橋田 亨
医学書院
2016-04-18



これもレジデントマニュアルと同様で,大学教育で学ぶ内容を水割りにして薄めたような内容でした.これを新人の薬剤師が読んで「これが薬剤師の仕事なのか」と思われると思うと残念でならない内容です.




第19位:外来医マニュアル





携帯性のある参考書で,外来のお供にしたいと思って買った参考書です.

特段勉強になる内容もなく,かぜに第3世代セフェムを推奨している点で私とは合わないなと思いました.字も小さいですし,紙面の関係でどうしても内容を絞らざるをえないのは分かりますが,その取捨選択が間違えているなと感じた1冊でした.




第20位:在宅医マニュアル





外来医マニュアルと良くも悪くも同じ感想ですね.

症候編も疾患編も内容が薄いので,どうせなら緩和ケア編をもっと充実させた方が良かったんじゃないかなと思いました.




第21位:薬効別 服薬指導マニュアル




服薬指導を改めて勉強してみようと購入した1冊です.

売り文句に「フィジカルアセスメントのチェックポイント」を加筆しました!とありましたが,いざ内容を読んでみると「どこに書いてあるの?」と思うくらい少なく,しかもその内容も判で押したような内容で全く参考にならなかったです.

申し訳ないですが,これほど買って無意味だったなと思う参考書も珍しいくらいの出来でした.





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本当に思った事をすべてぶつけて書いたレビューです.


基本的には薬局薬剤師としてのランキングですが,薬学生にオススメの順にソートした記事を書いたりもしたいと思っています.

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