ベンラファキシン(イフェクサー®)のまとめ
卒後5年目薬剤師の小林友稀です.ベンラファキシン(イフェクサー®)の勉強会がありました.
忘れないうちに記録をしておきましょう.
・低用量ではSSRI的に,高用量ではSNRI的に働く
ベンラファキシンはSNRIですが,低用量では主にセロトニンの作用を示し,高用量ではセロトニン系の作用に加えてノルアドレナリン系の作用も加わります.
以前の記事で,高用量ではセロトニン系の作用が落ちると書いてしまいました(現在は修正済みです)が,正しくは「高用量ではセロトニン系の作用が頭打ちになって,ノルアドレナリン系の作用がでてくる」だそうです.
ちなみにSSRIの作用はセロトニントランスポーターの占有率と相関があることが知られています.セロトニントランスポーターの占有率が80%を超えると,臨床的に効果がでるそうです.逆にいうと,占有率が80%未満では効果はまだ弱いということですね.
ベンラファキシンでは75mg/dの用量で,セロトニントランスポーターの占有率が80%を超えるようです.
同じヴィアトリス製薬ということでセルトラリン(ジェイゾロフト®)についても聞きましたが,セルトラリン50mg/dとベンラファキシン75mg/dが等価で,この用量でどちらもセロトニントランスポーター占有率が80%を超えるようです.
ちなみにノルアドレナリントランスポーターの占有率と,ノルアドレナリン系の効果の相関について質問しましたが,そちらは解明されていないそうです.
・うつ病の症状が消失していく順番と3種のモノアミンの関係
うつ病の症状のうち,最初に改善されるのは「不安」「イライラ」などのセロトニン作用だそうです.そのため低用量でSSRI作用を示すのは理にかなっていますね.
次のステップでは「憂鬱」「根気が無い」「興味が無い」など,いわゆる「仕事と運動」といわれるノルアドレナリン作用ですね.
そして最後のステップが「喜びがない」「生きがいがない」などのドパミン作用だそうです.
・主要代謝産物のデスベンラファキシンについて
以前の記事で,CYP2D6により代謝を受けてデスベンラファキシンになることで作用を示すこと,海外ではデスベンラファキシン製剤が開発されていることを示しました.
これについて確認すると,どうやらO-脱メチル化でできるデスベンラファキシンとは別の代謝物も作用を示すようで,必ずしもCYP2D6による代謝物(デスベンラファキシン)だけが薬効を示すのではないそうです.
・服用時点について
食後規定になっていますが,食事の影響は特に受けないそうです.
服薬指導の時には,必ずしも食事のあとでなくて良いので,患者さんの生活スタイルに合わせた指導ができそうです.
・腸内環境を整えることが,うつ病の治療に有効?
すこし脱線した話ですが,セロトニンの体内産生についても教えていただきました.
腸内細菌(どの菌種が,という特定はできていないようです)がセロトニンを産生し,その総量の2%程度が脳内に移行してセロトニン作用を示すようです.
腸内環境を整えるのは精神面においても大事なようですね.
ゆくゆくはセロトニン産生を担う腸内細菌を特定し,それを製剤化できれば「整腸剤で抗うつ作用」が期待できるようになるのでしょうか.
または腸内で産生されたセロトニンを脳内に輸送する経路を強化(より効率よく脳内移行させるなど)できれば抗うつ作用が期待できそうです.
今後の開発に期待ですね.
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