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カテゴリ:参考書レビュー

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卒後3年目薬剤師の小林友稀です.

薬物治療を考える時に,腎機能について考えることは必須です.

多くの薬が腎臓から排泄されますし,高齢者では腎機能が低下している事がほとんどですので,用量の調節が必要だったりします.

腎臓について,その正常機能,病態生理が分かっていないと,根本的な疾患の理解は難しいですし,疾患を理解できなければ薬物治療も考えることができません.

そこで今日は,腎機能について教科書レベルから学べる1冊を紹介します.

考える腎臓病学
谷口茂夫
メディカルサイエンスインターナショナル
2011-03-24



基本的な腎臓の構造,機能から,電解質の評価の仕方,それもナトリウム,カリウム,リンなど1つ1つが丁寧に解説されています.

この本の評価すべきポイントは,単なる基礎を復習できる教科書に留まらず,基礎知識を,臨床で活用する方法もしっかり学べる点です.

薬学生であれば良いですが,やはり臨床に出ている薬剤師としては,いくら基礎知識を身につけても,それが臨床で使えなければ,ただの頭でっかちになってしまいますね.

その点,基礎となる腎臓の解剖,生理,機能から病態の理解へと繋がるように順序立てて記載してある本書は,基礎から臨床まで一通り勉強しやすい構成と言えます.

また,「考える腎臓病学」の名の通り,単なる知識の暗記ではなく,学んだ知識をつかって,目の前の病態を考える力を身につけることができます.

これが最も大切なことですよね.

せっかく覚えた知識でも,それを臨床で活用できなければ「身につけた」とは言えません.

本書は,しっかりと知識を覚える勉強もできて,それを臨床へ適応することで,知識を「身につける」方法も学ぶことができます.

学生から薬剤師まで,どのステージで読んでも得られるものが多い良書だと思います.
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当ブログは薬剤師や医療従事者を対象にしたものです.ブログ内容の多くは,理解するために基礎的な薬学,医学の知識が必要です.知識不足による誤解や曲解には当ブログは責任を負いません.提示している症例は,実際にあった症例を基に教育的要素を付加した模擬症例です.また個別の相談や症例相談には応じられません. ご了承ください.その他,ご意見・ご感想は,ブログのコメント欄または下記メールアドレスまでお願い致します.
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卒後2年目で読んだ参考書 全43冊の総合レビュー

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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

薬学部を卒業して薬剤師になってから,丸2年が経ちました.

1年目が終わった時にもやったのですが,今年度もやります.

卒後2年間で読んだ参考書,全43冊を今の目線で再評価し直した総合レビューです.

タイトルがリンクになっているものは,個別のレビューを書いている記事に飛びますので,もっと詳細が知りたい!と思った方は是非,リンク先の詳細レビューも読んでいただければ嬉しいです.

今回はかなり数も多くなりましたので,分野別にランキングにしました.


【内科総合ランキング】


第1位 ジェネラリストのための 内科外来マニュアル



本書は薬局実習中からバイブルとして勉強していた参考書です.
内容の網羅性,難易度,即効性(読んですぐに臨床で使える実践的な知識が身につく,という意味),その全てのバランスが完璧だと思います.

治療薬マニュアルや今日の治療薬などのマニュアル本は,だいたいどの薬局にも置いてあると思いますが,本書も1冊は常備しておくと良いと思うような本です.

まずは最低限の内科外来診療の知識を本書で身につけて,それぞれ足りないところは成書で勉強する,という使い方が最適です.


第2位 トップジャーナルから学ぶ総合診療



英語論文が苦手だけど,やっぱり論文で勉強するのは大事だよな,なんて思っている方へ.
すこし異色なんですが,かなり役に立ちます.

その網羅性の高さ,通読が苦にならない読みやすさ,圧倒的な知識量.
はじめて読んだときは感動しました.


まずこの本を読んでから,取り上げられている原著論文を読むと,内容は日本語で頭に入っているので読みやすく,英語論文を読む練習としても最適です.

この記事を編集していて気づいたんですが,まさに今日,第3版が発売されていました!
私が読んだのは第2版でしたが,リンクは第3版を貼っておきます.

私もすぐにポチってしまいました(笑)


第3位 今日の治療指針



定番中の定番で,これと第4位の治マニは学生のころから愛用している方も多いんではないでしょうか.

私が素晴らしいと思う点は,毎年,全項目が新しく書き下ろされる点です.

たまに「これは違うだろ...」って思うような記述や,担当した人によって内容が薄いなと思うこともありますが,まずは治療指針を開いて見てみようとなることが多いのも事実です.

治マニとリンクさせて電子版で使えるので,iPhoneにいれてすぐ検索できるのもポイントが高いです.

Amazonリンクはポケット版です.


第4位 治療薬マニュアル

治療薬マニュアル 2020
医学書院
2020-01-10


治療指針と同様に学生時代から必携の参考書ですね.

今日の治療薬派の方もいると思いますが,私はずっと治マニ派です.

薬局には今日の治療薬がおいてあるので,見比べたりもしますが,やはり治マニに慣れているので結局は治マニを開いてしまうことが多いですね.

電子版の存在も大きいです.治療指針とセットで毎年必ず購入している1冊です.


第5位 同効薬、納得の使い分け〜根拠からわかる! 症例でわかる!



これはタイトルのリンクから,ぜひ個別レビューも参照して欲しいのですが,薬剤選択を考える際の骨組みになるような,基礎の考え方を学べる参考書です.

同種同効薬の使い分けを考える時に,どんな点に注意して,どうやって選択すればいいのか,という考え方が学べます.

これ1冊で十分!とはなりませんが,「考え方」を学べるというのが大きいです.


第6位 この1冊で極める不明熱の診断学



本当はもう少し上位にいれたいくらい素晴らしい1冊です.

不明熱に悩むことって多いと思います.熱発と倦怠感というcommonな訴えを,どう評価して,どのように管理していくか,を学べます.

熱発も倦怠感も,鑑別疾患が広すぎて診断的価値の低い主訴です.そこから,どのように鑑別疾患を絞り込んでいくかを学ぶには最適な1冊です.

もちろん基礎的な内容からしっかり書いてくれているので,初学者が読んでも理解しやすいと思います.分量や表現の難易度も難しくなく,分かりやすく書いてあります.

高体温と発熱の違いが分からなかった私でも,最後までついていくことができました.


第7位 極論でかたる総合診療



この本の良い点は,患者背景に沿って治療薬を選択していく考え方が学べる点です.

個別レビューでも書いていますが,患者背景を考えると,ガイドラインでは推奨されている治療が必ずしも当てはまらないことってありますよね.

そういった時に,どういう選択をすると良いとか,これはコンサルすべき状況とか,そういった幅広い総合診療の視点が学べます.

極論で語るシリーズ共通ですが,割り切りの良い文体も読みやすいです.


第8位 内科レジデントの鉄則




「最低限知っておかなければいけない」というエッセンスが詰まっている本です.

聖路加国際病院の内科コアカンファレンスという新人レジデントを対象にした院内カンファが発祥なだけあって,とにかく内容が実践的で,主に内科救急時対応について学ぶことができます.

外来では直接使わない知識でも,患者背景を考える際に有用ですし,在宅の現場では直接活きてくる知識が満載です.

病院薬剤師ではランキングトップでしょうね.とても有名な参考書です.


第9位 UCSFに学ぶできる内科医への近道



本書は白衣のポケットに入るサイズで,余白も大きいので自分なりに調べたり学んだことが書き込めるのが利点です.

病院薬剤師であればもっとランキングは上がるんでしょうが,薬局薬剤師ではこの辺かなと思います.

とはいえ,あまり大きい本が好きではなく,片手間でそれなりの内容が網羅できているものでざっと勉強したい,自分で書き込んでオリジナルの参考書に育てたい,なんて方にはオススメできる1冊です.



【鑑別診断系ランキング】



第1位 ジェネラリストのための 内科診断リファレンス



副題の「エビデンスに基づく究極の診断学をめざして」に偽りなく,どこから探してきたんだと畏敬の念すら感じるほど膨大な論文の数々が,エビデンスとして引用されています.

もちろん,ただ単に引用として載せるだけでなく,しっかりと1つ1つの論文を評価して,自身の臨床経験と融合させている点が素晴らしいです.

図や表が豊富(ほぼ全ページに載っています)で,文章も無駄がなく簡潔にまとめられているのが特徴的です.

処方提案の際にも,しっかりしたエビデンスをバックボーンにつけて提案できるので,とても強い味方になります.


第2位 フレーム法でもうコワくない 総合内科 ただいま診断中!



1位にするか悩みましたが,有用度でいうとやはり内科診断リファレンスは頭1つ飛び抜けているんですよね.

ただ,本書もマストバイと言って良い素晴らしい参考書です.

実習が始まった薬学生から若手薬剤師あたりがターゲットでしょうか.そのあたりで,この本で勉強できるフレーム法が身についていれば,同期の薬剤師より頭1つどころか3つくらいは抜けるんではないでしょうか.

この本で学んだフレーム法は外来診療でずっと使っていける知識ですし,今や当たり前に使っているのであまり意識していませんでしたが,改めて考えると,日常診療に溶け込んでしまうということは,それほど基礎となる大切な知識なんですよね.

う~ん,やっぱり1位でも良かったかも...


第3位 Dr.ウィリス ベッドサイド診断―病歴と身体診察でここまでわかる!



これもとんでもない参考書です.

有名なので知っている方も多いのではないでしょうか.

とにかく内容が深い.この一言につきますね.

私はやはりEBM全盛の医療を学んできた世代なので,内科診断リファレンスみたいな本が大好きなんですが,シンプルに身体診察と病歴からクリニカルパールを学べる本書は,その圧倒的なボリュームと,内容の深さが素晴らしい.

成書が苦手な方には向いていないですが,どっぷり知識の泉に浸かるのが大好き,という方は間違いなくオススメできる1冊です.

EBM全盛の医療のなかでも,クリニカルパールって本当に大切で,有用だと思うんですよね.


第4位 診察エッセンシャルズ



ちょっと外れた位置にいるというか,他の参考書に載っていないような項目が載っていたりするので、その点で評価している1冊です.

調べたい症候や状態について参考書を開いても載っていないか,記載が薄くて困っている時は,これを開くと解決することが多いです.

すこし分かりにくい表現のところもありますが,頼りになる1冊という印象です.

ともあれ,症候学の考えがしっかり鑑別診断に活かされている点が,個人的にもっとも評価できます.

単にデータの羅列ではなく,しっかり症候学から診断へと流れていく感じが好みです.

困った時に調べるには少し分かりにくいかもしれませんが,しっかり背景から学ぶには最適だと思います.それなのに白衣のポケットに入る大きさなのも評価が高いですね.

レビューしたのは第2版ですが,リンクは第3版になっています.
第3版も買おうと思っているので,購入したら改めてレビューします.


第5位 異常値の出るメカニズム 第6版

異常値の出るメカニズム 第6版
河合 忠
医学書院
2013-02-08


最近、レビューしたばかりの参考書ですね.

検査値系ではこれしかないので,このランキングだと5位になってしまいましたが,本当はマストバイといえる素晴らしい内容です.

これも,タイトルのリンクから個別レビューを是非参照して欲しいです.

検査値の評価が出来るようになるにはまさに最適な1冊です.

薬局に1冊置いておきたいですね.


第6位 キーワードから展開する 攻める診断学



「便秘」とか「嗄声」みたいなcommonな症候なのに,他の参考書に載っていない項目が載っているのが特徴です.

キーワードから展開するの名の通り「こういう症状を訊き取ったらこれ」という鑑別疾患の思いつきがすぐに浮かぶようになります.

そうすると外来で患者さんから症状を訊き取った時に「あ,この症状で否定するのはこの疾患だったな.じゃあこれを確認しておこう」という思考回路がスムーズになります.

第6位にいますが,これも絶対読んで勉強すべきだな,という内容が満載の素晴らしい参考書です.


第7位 内科診断学

内科診断学 第3版
福井 次矢
医学書院
2016-02-18


読破はしていませんが,辞書的に勉強した項目をみるのに使っています.

参考書というより教科書なので,困った時のファーストチョイスにするという使い方ではないですが,一応,ほかの参考書では書いていない記述があるかもしれないな~と思って開いて参考にするような使い方をしています.


第8位 総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!



・薬局にwalk in 外来でくる軽症患者に潜む,重症患者を見つけだし,適切に受診勧奨する.
・軽症例であると判断できれば,OTC・処方箋外医薬品で対応する.


どちらかというとドラッグストア勤務の薬剤師向けでしょうか.

難易度としてはかなり低いので,中学年の薬学生あたりから読んでもスラスラ理解できると思います.


【消化器ランキング】


第1位 ブラッシュアップ急性腹症 第2版

ブラッシュアップ急性腹症 第2版
窪田 忠夫
中外医学社
2018-11-22


これもぜひ個別レビューを見て頂きたいと思います.

腹痛診療の面白さにどっぷり浸かれる1冊です.

腹痛自体,薬局で遭遇する機会の多いcommonな症候なので,活用できる機会が多いのも嬉しいです.


第2位 ブラッシュアップ急性腹症

消化器に分類できる参考書がこれしかなかったので,ブラッシュアップを2冊ランクインさせました.

というか,消化器はブラッシュアップだけで今のところ困った事がないので,これだけでも網羅できているのかな,と今思いました.

この本は異常値が出るメカニズムや抗菌薬の使い方などのように,前の版のほうが良かった,ということも無いので、素直に第2版を買って良いです.

Amazonリンクは貼らないでおくので,購入される方は上の第2版を購入してください.


【循環器ランキング】


第1位 循環器治療薬ファイル 薬物治療のセンスを身につける

循環器治療薬ファイル 薬物治療のセンスを身につける 第3版
村川裕二
メディカルサイエンスインターナショナル
2019-03-19


循環器で迷っている方はこれ1冊買っておけば間違いないです.

本当は第2位のグリーンノートも買って欲しいですが,どれか1冊!と言われたらこれを選びます.

薬からも,疾患からもアクセスできる便利さ,そしてなにより内容の充実さが素晴らしいです.


第2位 循環器内科グリーンノート



疾患に関しては,第1位の治療薬ファイルよりこちらに軍配があがります.

特に推せるポイントは,循環器の視点からみた他疾患の管理の仕方です.


第3位 極論で語る循環器内科

極論で語る循環器内科 第2版
香坂 俊
丸善出版
2014-12-18


循環器診療の基本的な考え方、みたいなのが身に付く参考書です.

病院実習で循環器を回るときや,循環器について学ぶ際の最初の1冊にするには最適です.


第4位 3秒で心電図を読む本

3秒で心電図を読む本
山下 武志
メディカルサイエンス社
2010-03-25


以前は在宅で多かったですが,外来でも心電図をみる機会もあります.

検査値を見せてもらうのが一般的になり,次は心電図,という流れも来るのでしょうか.

薬学部のカリキュラムでも心電図の読み方が導入されたので,臨床現場にいる身としてはしっかり読めないといけないなと思います.

この1冊で,正常な心電図を正常だと自信を持って言えるようになります.

異常な心電図の読解は,また別の参考書で勉強する必要があります.


【小児ランキング】


第1位 正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン



医療者だけではなく,子育て中の親御さんにもオススメできるくらいの難易度です.

子どもの正常な発達に寄り添うのも,地域医療に根差した医療を行う薬剤師の務めではないでしょうか.

第2位 小児の薬の選び方・使い方



これも有名な参考書ですよね.実習先の薬局にもありました.

基本的な使い方を勉強するのに良いですね.小児科の哲学みたいな雰囲気を感じるのも好きです.

個人的に好きなフレーズは「子どもが飲んでくれない薬は薬ではなく,ゴミである」です.

必要最小限の処方にしましょう,という内容も共感できますね.
「七味唐辛子じゃないんだから,いっぱいミックスさせたって無意味」と書いてあるのは分かりやすく面白かったです.

4月17日に新版がでるみたいですね.買おうと思います.


【感染症ランキング】


第1位 抗菌薬の考え方、使い方Ver.3

抗菌薬の考え方、使い方Ver.3
宮入 烈
中外医学社
2012-03-30


文句なしに第1位です.

ジャンル分けせずに,すべての参考書をランキングにしてもトップに来ます.

それくらい素晴らしい参考書です.


感染症診療はどの診療科だろうと,必ず関わるものですので,これもマストバイな1冊だと思います.

薬局で処方医から電話で相談を受けることも多いんですが,やはり抗菌薬の選択や使い方について電話がかかってくることは多いです.

皆さんの薬局でも相談内容って,抗菌薬に関すること多くないですか?

絶対に買うべき良書です.個別レビューも見て欲しいですが,やっぱりVer.3のほうがオススメですね.AmazonリンクもVer.3のほうにしておきます.


第2位 レジデントのための感染症診療マニュアル



かの有名な,青木先生のマニュアルです.

第1位の岩田先生の参考書は考え方や使い方を理論から理解するものとして,こちらは辞書的に使う使い方として活用するのが良いかなと思います.

個人的にはサンフォードより青木マニュアル派ですね.


第3位 抗菌薬の考え方、使い方Ver.4



なんだかんだ言っても,これもランク上位には入ります.
すこし易しい内容になったとはいえ,初学者にはとっつきやすくて良いのでしょう.

読んでいて自分に合う参考書だと感じたら,ぜひVer.3のほうも読んでみてください.

AmazonリンクはVer.4で貼っておきます.


第4位 感染症プラチナマニュアル

感染症プラチナマニュアル 2020
岡 秀昭
メディカルサイエンスインターナショナル
2020-02-04


白衣のポケットに入るサイズで,必要十分な内容が記載されている.
毎年,更新されて新しい版がでる.


この2点で評価できる参考書です.在宅や往診同行の時に持って行くと,結構活躍する機会があります.


第5位 絶対分かる抗菌薬 はじめの一歩




感染症初学者にオススメの1冊です.

難易度としては学生レベルです.それでも臨床でかなり有用な情報や考え方が学べるので,これもマストバイとしてオススメしたい1冊ではあります.


【呼吸器ランキング】



第1位 呼吸器の薬の考え方,使い方

呼吸器の薬の考え方,使い方 ver.2
倉原 優
中外医学社
2016-04-07


呼吸器内科で使用される薬剤の特徴,同種同効薬の使い分けについて過不足なく臨床に則した内容で上手くまとまっています.

そうそう,実習中に研修医の先生から「鎮咳薬や去痰薬って全部プラセボかと思ってたけど,ちゃんと薬理作用あるんだね~」と言われた衝撃を思い出しました.

そんな人が処方切っているんだからちゃんと監査しないとな~と思いましたとも.

呼吸器で1冊だけ選んでと言われたら,間違いなく本書を選びます.


第2位 レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室



こっちは,初心者向けの内容です.

呼吸器にぜんぜん触れてこなかった,というような方は第1位の本より,こちらを先に読んでからのほうが良いかもしれません.

個別レビューでも書きましたが,症候学の観点が充実していたのもポイント高いです.

個別レビューでは改訂第2版でしたが,Amazonリンクは第3版です.


第3位 誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた



画像読影する機会って少ないと思いますが,胸部画像を読影できるようになる過程で身に付く3次元的な呼吸器臓器とその解剖,生理,病態の知識って,疾患をより具体的に捉えるのにとっても有用です.

3D+時間軸の概念をもって呼吸器疾患を考えられるようになると,そのステージに合わせた薬物選択もできるようになります.

そういった意味で画像読影の知識って,大事だと思うんですが,本書は全く画像なんてみたことないよって方でも理解できるような易しい内容から丁寧に解説してあります.


【膠原病ランキング】


第1位 ロジックで進める リウマチ・膠原病診療



この本も薬剤師マストバイな1冊です.

ステロイドの使用方法もそうですし,膠原病診療に必要な知識が初学者でも理解しやすい平易な言葉で書いてあります.

膠原病領域ってなかなか良い参考書が無いんですが,これは間違いなくトップレベルの参考書です.


第2位 好きになる免疫学




学生時代のころに買った1冊ですが,基本的な考えはずっと活用できるものになります.

学生の免疫学講義向けですが,苦手意識を持っているかたは、まずこれからでも良いかなと思います.


【皮膚ランキング】


第1位 ジェネラリストのための これだけは押さえておきたい皮膚疾患



これはめちゃめちゃ有用です.
皮膚科をメインで応需している,とかでなければ必要十分な内容でしょう.


一般内科外来で困ることはあまりありません.たまにあるんですが,それはこの本のせいではなくて,たぶん私の知識不足だと思います.

写真が多く,見開きで1疾患が網羅的に見れる構成なのも嬉しいです.


第2位 褥瘡治療薬使いこなしガイド

褥瘡治療薬使いこなしガイド
古田 勝経
じほう
2017-09-25


薬剤師であればFuruta Methodsは知っておきたいなあと思います.

主に褥瘡状態の評価と,治療薬選択について学べます.

施設在宅なんかでは,程度の差はあれど,ほぼ必ずといって良いほど遭遇する褥瘡について,いつも助けられている1冊です.


【精神ランキング】


第1位 本当にわかる精神科の薬




これは個別レビューでも記載しましたが,診療科関わらずすべての診療科の医師と薬剤師の読んで欲しい章があります.

「薬物療法の考え方」という章で,ここをしっかりと読んで身に付けるだけでも,巷にあふれる不適切処方の大部分をなくせると思います.

精神科としての側面から見ると,学部で習う基礎的な薬理が羊土社あるあるの,特徴的な可愛らしいイラストで易しく書いてあります.

もっと深堀りしたゴリゴリの薬理なんていうのはカッツング薬理学や他の成書に任せて,本書は易しく,分かりやすく,可愛らしく学べる1冊に仕上がっています.

とはいえ,実臨床にもしっかり耐えうる知識を授けてくれるので,重宝しています.


【神経ランキング】


第1位 極論で語る神経内科




神経内科の“当たり前”が身に付く1冊です.

薄くて数時間で読破できますが,その割に得られるものが多いのが「極論シリーズ」共通の特徴ですよね.

認知症の項目など,大変勉強になりましたし,これを読んでからかなり認知症患者の診かたが変わったな~と思います.


【腎臓ランキング】


第1位 極論で語る腎臓内科



利尿薬の使い方が特に参考になりました.

それと腎機能評価に必要な血液検査の項目や、Crに振り回されない腎機能評価の仕方など,学べる点が多かったです.


【救急ランキング】


第1位 あなたも名医!もう困らない救急・当直 ver.3 当直をスイスイ乗り切る必殺虎の巻!



発熱や咳,痰という毎日診る症状から失神や痙攣,胸痛,急性腹症などのemergencyな症状まで幅広く網羅して学ぶことができます.

ひとまず緊急度の高い疾患を否定すること,その上でアンダートリアージを避けて対応できるようにする力に絞って勉強できるところがポイントです.

症候学から,その症状,疾患の対応まで幅広く学びたい方にオススメです.


第2位 内科病棟・ER トラブルシューティング



「薬局薬剤師が病棟管理とかER対応を学んで何に活かすんだ」と思われる方もいると思います.

私が役に立ったなあと思うのは在宅の現場でした.

近年の医療情勢から入院期間の短縮に伴い,比較的症状が重い状態でも在宅に戻される患者さんは多いです.また,本来は入院管理が適切と思われる状態でも,在宅医療を希望する患者さんも多く存在します.

在宅という現場は医療機器に乏しく,急変時の対応が最も難しい場所であるため,在宅医療に関わる医療者は救急の知識が必須といえるでしょう.

そんな医療機器もなく,専門のスタッフが常駐している場所でもない在宅で患者を診るためには,自分自身の知識が唯一にして最大の医療資源です.

その点で見ると,本書の特徴とする「救命した患者さんを急変させない管理」は、まさに我々,在宅医療を担うものには必須の知識だと思いませんか?


【その他】

上記のどれにも当てはまらない参考書はランキングではなく,それぞれ簡潔に特徴を列挙して紹介する形をとりました.

論文を正しく読むのはけっこう難しい: 診療に活かせる解釈のキホンとピットフォール




本書は論文のどこをどう読んで,どう評価すれば自分の患者へその治療を当てはめて考えていいのかというスキルを身に付けることが出来ます.

RCTが一番いいかと言えばそうではないですし,研究デザインごとに異なる患者背景をしっかり評価して応用する力がなければ,論文をたくさん読んでもただの頭でっかちになってしまい,患者の治療に活かすことができません.

これもマストバイといえる内容の1冊です.


【おまけ】
今日の診療プレミアム vol.28

紙の本ではないのですが,電子書籍でお世話になったものなので紹介します.

毎年,使用権の更新が必要(有料)ですが,薬局で処方医からのコールがかかってきたときに、ぱっと開いて調べながら返事を返せていたので、かなり助けになりました.

複数のページをタブで開いておける機能も使いやすかったですし,オフラインで使える機能もありがたかったです.

【ランキングの注意点】
今までブログで紹介した参考書で,今回のランキングに載っていないものもあります.それは別の記事で書こうと思っている「薬学生向けの参考書おすすめランキング」に載せようと思っているものですので,そちらをご覧にただければと思います.

さて,

たぶん,今までの記事の中で1番長くなったと思います.

1年目の時は、なんだか中途半端な形で終わってしまっていたので,満足できる形で総合レビューができてうれしく思います.



最後に,この記事でレビューした参考書,すべてにかかった金額を発表して,終わりたいと思います.



総額いくらになったでしょうか.


合計金額...



310,420円!


参考書ってお金がかかるなあ...


3年目も負けずにたくさん勉強します!!!

今後とも,応援よろしくお願い致します!

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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

今日,紹介する本は,先日紹介した「循環器薬物治療ファイル」と共に,循環器疾患の治療管理では必ず確認している参考書です.




まず,総論から始まるのですが,難易度としては,教科書レベルの基礎から書いてくれています.

解剖,基準値,身体所見,各種基本検査などは「学生時代に一生懸命覚えたな〜」となるような基礎の内容から,臨床でつかえる実践的な知識までが,うまく繋がるように丁寧に書いてあります.

特に「循環器疾患のバイオマーカー」という章があるのですが,心不全などの評価に用いるBNP,ANP,NT-proBNPなどの記載が詳細かつ分かりやすく,それでいてたった2ページに収まっているコンパクトさが素晴らしいです.
まさに“必要十分”な内容と表現だなと思います.

続いて,救急外来編ですが,これは主に病院薬剤師に参考になる内容かと思います.

病院実習のときに持っておきたかったな〜と感じました.

ただ,どれもマストで知っておかなければならないような,コモンな疾患ばかりなので,一通り目を通しておくべきかと思います.

簡潔に疾患の概念や,診断のポイント,予後,合併症,治療方針などが記載されています.

特筆すべきは,予後や合併症の記載でしょう.

この大きさの参考書で,予後や合併症にしっかりと触れ,治療管理していく上で気をつけるべき点を学べるのは珍しいです.


慢性管理を要する疾患が学べる,一般外来・入院編では,1つ1つの項目は短いのですが,内容が充実しており,ほかの参考書と比較しても,この参考書にしか書いてないような内容が記載されていることが多いのが素晴らしいです.

治療管理を考える際に,成書などに一通り目を通した後,この参考書を開くと新たな発見があることが多いです.

もっとも,最近はまず最初にこの参考書を開くことが多くなりましたが.

それで困ったことが無いので,成書で腰を据えて勉強するほどの時間なんて無いよ!なんて人はこの1冊だけでもある程度カバーできるので,そういうニーズにもぴったりかと思います.

また,全編を通してイラストが多く,視覚的な理解がしやすいのも助かります.

もう1つ,評価したい項目があります.

それは「リスク因子のコントロール」という項目です.

これは糖尿病や脂質異常症などの,よく合併している疾患について,循環器管理の視点から,これらの合併症をどうコントロールするかが書いてあります。

患者さんが抱える全疾患の薬物治療管理を行う薬剤師にとって,他疾患との兼ね合い,バランスの取り方を学ぶのは必須です.

循環器の専門家は,他疾患をこう捉えて,こうやって管理していこうとしているのか,と学べる参考書はなかなか無いので,大変勉強になりました.

DMや脂質異常の他に,睡眠障害なんかもあります.

ここは是非とも通読してほしい項目だと思います.

最後に薬物療法の項目がありますが,さすがにここは基礎的な内容に終始しています.

素直に,薬物治療に関しては,以前に紹介した「循環器薬物治療ファイル」を参照するのがオススメです.

ともあれ,循環器領域の疾患について一通り学びたい,長い文章を読むより,簡潔な文章とイラストや図表で理解する方が好きな方にはオススメの1冊です.
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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

薬剤師の外来業務のおいて,最も重要なのは治療効果の評価です.

処方によって最大限のメリットが患者にもたらされ,そのリスクを最小限とするように薬物治療全体を俯瞰して管理する.

これが薬剤師による薬物治療管理です.

そして,その薬物治療管理において強力な武器となるのが,臨床検査値です.

今日は,そんな検査値について学べる1冊を紹介します.

異常値の出るメカニズム 第6版
河合 忠
医学書院
2013-02-08



私が紹介しているのは,第6版です.

現在,第7版が最新版として出ていますが,個人的には第6版のほうが良かったと感じているので,あえて6版をレビューしています.

第6版では462ページあった内容が,第7版では293ページと大幅に削減されてしまいました.

内容を見ても,初学者に分かりやすく,簡潔で必要最小限の内容になってしまった印象です.
それはそれで,需要があるんでしょうが,私が求めているのは“詳細な”異常値の出るメカニズムでした.

その点で見ると,第6版はまさにぴったりの内容です.

正常だった機能が破綻した際の病態から,それが異常値として検査値に現れるまでの課程について,かなり詳しく記載してあります.

異常値発現のメカニズムを病態から理解できれば,もちろんその対処の仕方を考えることもできます.

また,病態ごとに異常値が出るメカニズムが異なるので,目の前の患者さんの病態から,現状は正常値でも,注意して動向を見守るべき検査項目は何か,というのも理解できるようになります.


例えば,γ-GT肝機能異常を示す検査値の1つであることは,皆さんご存じだと思います.
患者さんも「お酒飲みすぎちゃってるかなぁ」なんて言ったりしますよね.

しかし,実はγ-GTの臓器分布をみると,最も多く存在するのは腎臓の近位尿細管なんです.
次いで膵臓が多く,肝臓は3番目なんです.


では,なぜ腎機能や膵臓の異常としてではなく,肝機能異常の指標として用いられるのでしょうか.

これが説明できるようになります.

また,アルコールによるγ-GTの上昇メカニズムと,閉塞性黄疸で上昇するメカニズム,肝細胞障害で上昇するメカニズムも,それぞれ異なります.

そんなメカニズムの差を知ってなんになるんだ,と思う方もいらっしゃるでしょう.

メカニズムの差を知ると,例えば肝胆道疾患が無いのにγ-GTが高値になっているという症例に出会った際に,それは,どこ由来のγ-GTなのかが推察できるようになります.

詳細は是非,本書を読んで欲しいのですが,例えば肝胆道以外でγ-GTの上昇を認めた際に,基準上限値の2~5倍程度の上昇であれば膵疾患が疑わしいです.

5倍以上の上昇がみられる際は悪性腫瘍,経時的に軽度~5倍程度までの上昇がみられ,それが約1ヶ月程度継続するような症例では心筋障害が疑われます.

他にも肺疾患や糖尿病で上昇するメカニズムもあります.

そういった検査値のバックボーンを学ぶことで,より細やかな治療管理を行うことができます.

処方箋に検査値を載せてくれる医療機関も増え,そうでなくても患者さんから検査値を確認することが一般的になってきた昨今では,よりクオリティーの高い検査値の読解ができることは薬剤師としてかなりの武器になります.

ぜひ,第6版が無くならないうちに,手に入れて勉強して欲しい1冊でした.

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当ブログは薬剤師や医療従事者を対象にしたものです.ブログ内容の多くは,理解するために基礎的な薬学,医学の知識が必要です.知識不足による誤解や曲解には当ブログは責任を負いません.提示している症例は,実際にあった症例を基に教育的要素を付加した模擬症例です.また個別の相談や症例相談には応じられません. ご了承ください.その他,ご意見・ご感想は,ブログのコメント欄または下記メールアドレスまでお願い致します.
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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

今日レビューする参考書は,循環器領域では有名な参考書です.

循環器治療薬ファイル 薬物治療のセンスを身につける 第3版
村川裕二
メディカルサイエンスインターナショナル
2019-03-19



上記のAmazonリンクは第3版なんですが,私が勉強したのは第2版でした.

よって,このレビューも第2版のレビューになります.ご了承下さい.

循環器領域において,かなりの良書だと感じたので,近いうちに第3版も購入しようと思います.

さて,本書の特徴ですが,

「病態からのアプローチ」と「薬物からのアプローチ」と2つの切り口から解説がなされています.

自分が担当している患者さんの治療薬を考えたいときは,病態からのアプローチで治療方法を勉強して,治療薬の使い分けを考えたいとき,この薬とこの薬のどっちが良いんだろうか,と考えるときは薬物からのアプローチで勉強する.

こういう使い方ができます.

構成的には辞書のように,必要と思う箇所をひらいて勉強していく形になることが多いと思います.

しかし,文章がかなり実践的で,しかも読みやすく引き込まれるので,頭から通読するのも苦になりません.

最も評価すべき点は,「こういうときはこうする!」「こういうときは難しい!ごめん分からない!」「これは良い!」「これはダメ!」とごまかしが一切無く,正直に書かれていることでしょう.

しっかりエビデンスに基づいた知識や,筆者の経験から「こういうときはこうする良い!」という点も簡潔に記載されていますし,「こういう症例は難しい.正解が分からない...」というのも素直に書いてあります.

もう1点評価したい点は「なぜこの薬を使うのか」=「この薬を使う利点と欠点」が箇条書きで簡潔に書いてある記載が多いことです.

ほかの参考書でも,なぜこの薬を使うのかを解説している参考書は数多くありますが,その多くは「これこれこういった臨床研究でこれが良かった」やら「ガイドラインで推奨されている」やら,大切な知識であることは間違いないんですが,どこか臨床と上手くかみ合わないというか,どこか無機質で,説明をみて患者さんのことが思い浮かばない解説が多いんです.

その点,この参考書は「この薬を使うのはこういう理由!」というのが,ただのエビデンスの紹介にとどまらず,筆者も現場で悩んできたんだなという,良い意味で“生々しい理由”が満載なんです.

参考書を読んでいるというより,経験豊富な先輩から話を聞いているような,そんな気にさせてくれる記載が素晴らしいです.

循環器領域ではマストで買いだなと思った良書でした.有名なだけありますね.

はやく第3版も買いたい...
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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

今回,勉強したのは同効薬の使い分けについて学べる参考書です.




研修医や若手医師をメインターゲットにした,レジデントノートという著名な雑誌の増刊号です.

医師向けの参考書ですので,詳細に使い分けを学ぶというよりざっくり薬の選択をする際にどう考えたら良いかを学ぶ,という点に重きを置かれています.

薬剤選択に関しては,私たち薬剤師がもっとも得意とするところです.

これは私見ではなく,この参考書でも随所に登場する見解です.

【総論】
“薬物体内動態を考慮した投与設計や,臓器機能に合わせた薬物選択については,薬剤師が得意とするところであるので,連携して処方を設計するとよい.”(P.18)

“処方薬の使用状況を適正に観察し,その結果・副作用を評価することが薬剤師の責務として,医薬品医療機器等法に記載される方向で,2019年度の法改正が進められている”(P.18)


【呼吸器】
“効果が実感でき,副作用が少なく,患者の満足度が高ければ,長く続けられるので,そのような薬剤を患者とともに見つけることが大切である.その際に,くり返しの吸入支援を行うが,その重要な担い手は薬剤師であり,病薬連携がポイントとなる”(P.68)

他に精神科の領域では,医科の「向精神薬調整連携加算」と調剤の「服用薬剤調整支援料」などの診療報酬で評価されているところにも触れ,薬剤師との連携が必要不可欠だと述べています.

若手医師向けの医学教育の中にも,薬剤師との関わりの重要性が謳われるようになったのは大変嬉しい事であるのと同時に,それだけの仕事をこなす覚悟が必要なんだなと,改めて感じることができます.

すこし脱線しましたが,「1疾患1治療薬」の時代から「1治療薬多疾患」へと治療の歴史が進んできて,今後ますます薬剤選択は複雑かつ重要性を担う業務になっていきます.

そんな中で,医療界から「薬剤選択のプロフェッショナル」としてその役割を期待される薬剤師は,患者さんに合った薬剤をどう選ぶかという知識は,必ず勉強しておく必要があります.

例えば,SGLT2阻害薬はその機序から,高齢者の脱水がフォーカスされ,一気に慎重論が広まりました.
しかしその一方で,糖尿病性腎障害や心不全への改善効果も認められ,肥満改善尿酸値低下などとともに多面的な作用が認められつつあり,再評価の声もあがっています.

そういった内容のエビデンスは,ランダム化比較試験やシステマティックレビューなどの,信頼性の高い情報に基づいて作成されますが,それもあくまで集団としての結果であり,目の前の患者にスライドして適応できるわけではありません.

そのため,目の前の患者の疾患,臓器機能,生活習慣など,総合的な視点から薬剤選択を行う必要があります.

本書は,薬剤選択の力を身につけるための入門書的な位置づけとなっています.

これで一通り考え方を学んだ後は,それぞれ各論を取り扱っている専門書で勉強するのが最も効率の良い勉強法かなと思います.

薬理や薬物治療の講義が始まったばかりの薬学生にもオススメできるほど丁寧に書いてある1冊です.

これは素晴らしい良書でした.

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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

最近,なにかと世間を賑わせた岩田健太郎先生の本です.

抗菌薬の考え方、使い方Ver.3
宮入 烈
中外医学社
2012-03-30


「抗菌薬の考え方、使い方 Ver.3」です.

実は私,岩田先生のめちゃめちゃファンです(政治的な発言は置いといて...)

感染症は学生時代から好きな科目の1つで,この本もVer.3でどハマりして、Ver.4が発売された時もすぐに買いました.

感染症領域の勉強で,最初に読む1冊は何ですかと聞かれたら,間違いなくこの本を挙げます.(※ 薬学生に聞かれたら,以前レビューで書いたこちらを薦めます.教科書レベルの基礎的な内容です)

感染症領域の勉強で,基礎から応用まで幅広く身につけるには何を勉強したらいいですかと聞かれても,間違いなくこの本を挙げます.

たぶん,卒後1年目で読み返した本トップ3には入ります.間違いなく.

この本のすごいところは,
感染症診療にあたる心構えから,各抗菌薬の特徴,使い方が詳しく書いてあることです.

なんだ,ありきたりな書評だなと思ったあなた,まだ早いですよ.

今まで100冊近い専門書,参考書を読み込んできた経験から,最初にその領域の診療への心構えが書いてある本は良書率(臨床的に価値のある,という意味で)が高いです.

それは私がそういった心構えを大切にしているからというバイアスもあるとは思いますが,やはり診療における心構えを大事にしている人は,その分野への熱量も強く,それが内容の充実さに繋がっているんだと思います.

特に第2章の「感染症診断のコツ」は,感染症という枠組みを超えてみても,かなり素晴らしい内容です.

よく言われることではありますが,感染症診療でも「病歴聴取と身体診察」の大切さは変わりません.

それは医師にとっては診断のために,薬剤師にとっては薬物治療の評価のために,大きな力を発揮するものです.


そして各抗菌薬の使い分け

ただ,抗菌薬が分類ごとに羅列されていて,それぞれの特徴や使い方が書いてある参考書は世にごまんと溢れています.

この本が素晴らしいのは,読んでいていつの間にか夢の中にいる,というような単調なつまらない文章ではなく,“岩田節”でテンポ良く,かつ分かりやすく,物語を読んでいるかのように進められる文章にあります.

もちろん,難しいことを分かりやすく書く手法の1つとして,語り口はよく使われるテクニックなので,こういった形の参考書も多く存在します.

しかし,ここまで難易度が高く,深い内容を,そうと感じさせず伝わるように読ませる文体は,一級品です.

語り口調の参考書は数あれど,それがここまでのレベルで書かれている本は見たことありません.

1段階,2段階上,とかいうレベルではありません.

ジャンルを問わず「難しい内容を簡単に口語調で伝える本の書き方」の教科書とされていても不思議ではないレベルです.


臨床視点からみても,どの感染症にどの抗菌薬をチョイスすればいいか,どの抗菌薬は使ってはいけないのかが,理論から理解できるようになります.

これはかなり大きな事で,特に我々薬剤師にとっては,例えば処方提案する際に,単に「この抗菌薬より,この抗菌薬の方が良いですよ」と言うのは薬剤師としてイマイチですよね.

臨床でEBMを守るのも薬剤師の使命ですから,やはりエビデンスを示しながら処方提案したいものです.

そのエビデンスを身につけるのに,これより分かりやすい本はありません.

大好きな本なのでレビューが長くなってしまいましたが,本当に本当に,たくさんの薬剤師に読んで欲しい1冊です.

読めば読むほど,身近で行われてる感染症治療が,最適とはほど遠いものだと感じるはずです.

1点だけ注意点があります.

これは完全に個人的な好みの話ですが,Ver.4よりVer.3のほうがオススメです.

それはVer.4のまえがきにもありますが,Ver.3は少しマニアックな「重箱の隅突き」のような内容が多く,より多くの読者に読んでもらうために,そういった内容はカットしたと書いてあります(もちろん臨床的に重要な内容はカットされてません)

個人的には,岩田先生の本でしか読めないようなマニアックで難しい内容を,岩田節で分かりやすく読めるのが物凄く知識欲を刺激されて大好きだったんです.

岩田先生がこのブログを読んでいることは無いでしょうか,どうかVer.5ではマニアックな内容も復活させて,最新の感染症診療について書いて欲しいなと思ってます.

とにかく感染症領域は,この参考書を読まずして始まりません.本当に必読な1冊です.

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卒後1年目で読んだ参考書 全21冊の総合レビュー

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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

卒業して薬局で臨床業務に取り組むようになって1年が経ちました.

この1年で読んで勉強した参考書すべてをもう一度(ざっと)読み返し,いろいろな知識と1年分の経験が身についたうえで,改めてレビューをしなおすことにしました.

レビューをしなおすのに必要な分ではありますが,もう一度買った参考書全てを読み返したので,この記事1本書くために丸2ヶ月かかりました(笑)

それだけ本気でレビューをしなおしたので,たくさんの方の参考になればと思います.


本のタイトルがリンクになっているものは,以前に参考書レビューで取り上げたものです.細かい評価や,初めて読んだ時の感想を読みたい方はぜひリンク先の記事もご参照ください.


では,参ります.





第1位:フレーム法で、もうコワくない 総合内科 ただいま診断中



この1年で最も読み返した頻度の高かった本だと思います.

卒後1年目の新人薬剤師から,病院から薬局へ転職される方にも間違いなくオススメです.個別レビューでも書きましたが,私が薬剤師業務で最も大切だと考えている「監査力」を身に付けるのに大いに役立つ1冊です.

「フレーム法」と「Red flag」の考え方というシンプルでありながら汎用性の高い勉強方法で,無限に思える患者主訴から,的確に病態を紐解いていく考え方は素晴らしいです.

この知識をもって「今日はどうされましたか?」と聞くのと,ただ何となくルーチンで聞くのでは天と地の差が出ます.

当たり前ですが,気付けなければスルーしてしまう主訴や症状に気付くことができるようになって,そこからより適切な治療薬へ変更して良くなった,なんて薬剤師業務の1番のやりがいを感じる経験が出来たのもこの本のお陰だと思っています.まさに必携といえる1冊です.




第2位:ジェネラリストのための 内科外来マニュアル



1位にするかめちゃめちゃ悩んだ1冊です.ただ初学者には1位の本の方がとっかかりやすいかなという理由で2位にさせていただきました.

1位の本は主に「考え方」を学ぶ本ですが,本書はそれを身に付けた後に,実際にさまざまな主訴から実践的に鑑別を絞り込んでいく力を身に付けることができる本です.

また,薬局でメインとなる継続外来の患者への評価の仕方は本書が断トツで優れています.

初版を薬局実習で使って以来,ずっと手元において読み込んできた参考書です.

ただいま診断中で「フレーム法」と「Red flag」を身に付けて,本書でよりブラッシュアップした初診外来と継続外来での考え方を学べば、ある程度のケースはミスなく対応できるようになります.

薬局外来を行うに当たっての最低ラインはこの上位2冊を理解していることかなと感じています.




第3位:Dr.ウィリス ベッドサイド診断





ある程度の症候学や診断学を学んで,参考書も何冊か勉強してきて「ある程度の知識が身についてきたな.もう大体どんな症状や主訴を聞いても評価できるようになってきたぞ」と,今思えば少し傲慢な考えを持つようになっていた私をぶちのめしてくれた良書です.

本書を読み始めて,ある程度勉強してきたはずなのに,一体今までの自分がどれだけの症状や所見を見逃し続けてきたか,得られた情報をどれだけ活かしきれていなかったかに驚きました.

上位2冊で学んだ後に,もっと深くそれぞれの症状や所見を理論的に学ぶのに最適です.

読破して勉強するのは大変ですが,投薬時の問診で疑問に思った症状や主訴をあとで読んでみて,そうやって評価するのか!とかそういう意味のある症状だったのか,じゃあ次回はこれを確認したほうがいいな.という風に勉強するのがオススメです.

薬物治療を考える上で不可欠な病態を,薬局という制限の多い空間で病歴と身体所見から紐解いていく力を身に付ける最高の参考書です.上位2冊を読破した後は絶対にお勧めです.




第4位:ホスピタリストのための内科診療フローチャート





私はめちゃめちゃ処方提案する薬剤師なのですが,私が提案する処方の方が良いですよ!と処方医に示すための証拠というか,根拠となる文献を探すのによく参照しています.

EBM全盛の医療において,やはり質の高い論文や研究を根拠に処方提案ができたら素晴らしいですよね.そのうえで経験的な要素や,実臨床ではこうすると上手くいくという情報も持っていたら鬼に金棒です.本書はEBMがぎっしり詰まっている上にクリニカルパールも随所にあり,1ページ1ページの質の高さに圧倒されます.

ある程度の知識を身に付けてからじゃないと,本書を100%活用するのは難しいかもしれませんが,根拠として示されている文献まであたって勉強するとものすごく知識が深まります.

個別レビューを書けていなかったので,近いうちに書いてリンクに貼っておきます.




第5位:ジェネラリストのための内科診断リファレンス




1つ1つのボリュームはフローチャートに軍配が上がりますが,網羅性の高さと,何より記載されているエビデンス量に関しては本書のほうが,というより今まで読んできた中で最もEBMに基づき,最もエビデンスの豊富な参考書ではないかと思います.

疾患に対して,重要な臨床情報,臨床所見は何なのか.そしてそれがどの程度の診断価値を持つものなのかが明確に数字で示されているので,とてもインパクトがあります.

この本も処方提案のエビデンスづくりに重宝しています.

表やグラフが多い点もポイントで,視覚的に理解するほうが頭に入るんだよなって方にも間違いなくオススメですね.




第6位:トップジャーナルから学ぶ 総合診療アップデート





個別レビューにも載せましたが,論文をベースに勉強したいけど英語で読みたくないというワガママに答えてくれる名著です.

そして分厚い本なのにスイスイ読めてしまえるほど,読み物としても素晴らしい参考書です.

必須とか,必ず知っておくべき!というスタンスより,こんな研究があるんだよ,とかこんな治療が実は世界スタンダードなんだよ,というのを知る目的で読む本かなと思います.

それでも読んでいるとハッとさせられることも多く,間違った治療を見逃して通してしまっていたなと反省することも多かったです.




第7位:キーワードから展開する 攻める診断学




ちょっとテイストの変わった参考書というか,今までベースにして勉強してきた参考書には載っていないものも取り上げてくれる参考書というイメージです.

まさに痒いところに手の届く本.という立ち位置ですね.

レジデントノートの増刊版ということもあって,そんなに難易度が高いわけでもなく,たぶん薬学生レベルから読みこなせる本だと思います.解説も充実していて読みやすいです.

「見逃してはいけない疾患」と「よくある疾患」の鑑別を付けられるようにするのは,薬剤師として臨床で勤務する上で間違いなく必須のスキルですが,体系だって学ぶことが少なかったと思うので,学生の副読本としても良いかもしれません.




第8位:もう困らない 救急・当直ver.3




病院勤務の方や,救急の場で働いている薬剤師であれば間違いなくトップである参考書ですね.

発熱や咳,痰という毎日診る症状から失神や痙攣,胸痛,急性腹症などのemergencyな症状まで幅広く網羅して学ぶことができるので,薬局薬剤師にも十分に勉強する価値がある内容です.

薬剤師として,必ず気付けなければいけない緊急度の高い疾患を間違いなく否定すること.その上でアンダートリアージとならない治療を行う力を身に付けることができます.

医療に100%は絶対にないので,なるべく拾い上げる網を細かくする努力は医療者全員がすべきです.

薬剤師も薬物治療を行う最後の監査役として,最も目の細い網になれるよう本書で勉強するのは間違いない選択肢だと思います.




第9位:診察エッセンシャルズ




症候学や診断学を学んで鑑別疾患を想起できるようになっても,成書で確認しないとなかなか不安は取り除けませんよね.

すぐに確認したくても,成書を持ち歩くのは現実的ではありませんし,白衣のポケットサイズの本があればいいなと思っている方にぴったりの1冊です.

鑑別疾患ごとの典型的な経過や,その症状がこういう病歴を辿って発症していたらより疑わしいだとか,ほかにこういう症状も出ていることが多いよ.などの解説が細かく示されています.

若干,表現が分かりにくい部分もありますが,それでもこのサイズでこの充実性は間違いなく買いの1冊です.




第10位:極論で語る総合診療




万遍なく全身の薬物治療を勉強する薬剤師として,特に新人のうちは学ばなければならない事が膨大にあります.そこで,まずは頻度の高い疾患に対してしっかり対応できるようにする事が大切ですよね.

診療科を限定せずに,どんな診療科から患者さんが来ようと,完璧な薬物療法が提供できるようにすることが我々,薬局薬剤師の仕事です.

そういう意味で,いろいろな専門領域の最も頻繁に遭遇する疾患の薬物療法について学ぶことが,優秀で頼りがいのある薬剤師になる第1歩なんではないかと思います.

本書はそんな薬剤師になるために十分な知識を身に付けることができる1冊です.

なんというか内科外来診療の常識を身に付けることができる,というのが1番しっくりくる感覚だと思います.




第11位:よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!




コンセプトや内容は間違いなく初学者向けですし,そもそも薬剤師向けに書いてある本なので良いかなと思って購入しました.

基本的には薬局に来局した患者さんをOTC対応とするか,受診勧奨するかのトリアージを身に付ける力をつけるものです.

残念なのはほぼ全ての対応で「受診勧奨」が答えになっている点です.

薬剤師には適切な診療科に振り分けて受診勧奨させるということをして欲しい,という気持ちで書かれているからでしょう.

OTCや,薬剤師が処方できるBPCで対応できる疾患や症状についてスポットを当てた方が,より実践的で素晴らしい内容になると思いますが,薬剤師にそんなことができるなんてきっとまだ誰も思っていないので,しょうがないのかなとも思います.

ちょっと視点がずれているのが残念ですが,学べる内容としては間違いなく素晴らしいです.




第12位:内科診断学

内科診断学 第3版
福井 次矢
医学書院
2016-02-18



内容の充実性としてはもっと上位にランクインさせたいのですが,どうしても辞書的な活用の仕方しかできていません.

教科書として優秀なので,時間のある学生時代に読み込んだりするとまた評価は違うのかなとも思います.

今でも時々開いて,確認するのに使っています.




第13位:内科レジデントの鉄則




とても有名な本で,内容も文句なしの素晴らしいのですが,薬局薬剤師としてはどうしても優先度は下がってしまいます.

病院薬剤師であればトップ3に入る良書だとは思います.

基本的な入院管理下での内科全般を学ぶことができます.外来でも活用できる知識も身に付けられますし,基本的な治療のスタンダードを学べるのでさすが著名な参考書だけあるなという出来でした.

病院実習前の薬学生には絶対に読んで欲しいですね.




第14位:内科病棟・ER トラブルシューティング




内科レジデントの鉄則で基本を抑えた後に読むのにベストな参考書です.

より実践的で,トラブルシューティングと謳うだけあって「何かあったとき」「うまくコントロールできていないとき」にどうすればいいかを学ぶことができます.

薬剤師としては,そんなトラブルへの対応を知ることで未然にトラブルを防げるように目を光らせるのが本書の活用の仕方だと思います.




第15位:UCSFに学ぶできる内科医への近道





若干の内容の薄さはありますが,あまりたくさん成書とか読み込むようなガチの勉強はちょっと…という方にはいいかもしれません.

これ1冊で最低限の事はしっかりと網羅できているとは思いますし,エビデンスを大事にしながら臨床経験も織り込んで記載してある姿勢は素晴らしいと評価できます.

病院勤務で力を発揮できる1冊ですね.ポケットに入るのも評価できる点です.




第16位:総合診療・感染症科マニュアル




これも著名な参考書ですね.病院実習の際にかなり重宝しました.

白衣のポケットの中でも,胸ポケットに入るくらい小さい本です.しかし内容の充実性は素晴らしく,とても勉強になる話が満載です.亀田の精神が奥深くまで染みわたっている1冊ですね.

ただ小さすぎて読むのが大変なのが難点ですね.

医療を行う上での姿勢を身に付けるためにも一度は読んで欲しい参考書ではあります.




第17位:薬剤師レジデントマニュアル




レジデントマニュアルシリーズに薬剤師版ができた!と喜んで購入したのですが,事前の期待値が高かったせいもあるか,読んでみてがっかりした内容でした.

大学で学ぶ内容にすら達しておらず,学部教育以下の内容だったのが残念ですね.




第18位:薬剤師レジデントの鉄則

薬剤師レジデントの鉄則
橋田 亨
医学書院
2016-04-18



これもレジデントマニュアルと同様で,大学教育で学ぶ内容を水割りにして薄めたような内容でした.これを新人の薬剤師が読んで「これが薬剤師の仕事なのか」と思われると思うと残念でならない内容です.




第19位:外来医マニュアル





携帯性のある参考書で,外来のお供にしたいと思って買った参考書です.

特段勉強になる内容もなく,かぜに第3世代セフェムを推奨している点で私とは合わないなと思いました.字も小さいですし,紙面の関係でどうしても内容を絞らざるをえないのは分かりますが,その取捨選択が間違えているなと感じた1冊でした.




第20位:在宅医マニュアル





外来医マニュアルと良くも悪くも同じ感想ですね.

症候編も疾患編も内容が薄いので,どうせなら緩和ケア編をもっと充実させた方が良かったんじゃないかなと思いました.




第21位:薬効別 服薬指導マニュアル




服薬指導を改めて勉強してみようと購入した1冊です.

売り文句に「フィジカルアセスメントのチェックポイント」を加筆しました!とありましたが,いざ内容を読んでみると「どこに書いてあるの?」と思うくらい少なく,しかもその内容も判で押したような内容で全く参考にならなかったです.

申し訳ないですが,これほど買って無意味だったなと思う参考書も珍しいくらいの出来でした.





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本当に思った事をすべてぶつけて書いたレビューです.


基本的には薬局薬剤師としてのランキングですが,薬学生にオススメの順にソートした記事を書いたりもしたいと思っています.

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今日紹介する参考書はものすごく著名な本なので,ご存知の方も多いかと思います.



一度,めちゃめちゃな抗菌薬の処方をする医師のところに直接話に行って,

「君のいう話にエビデンスはあるのか?」

と言われたときに

「青木先生のマニュアルで学びました.原著論文はこれです」

と示して完封(?)したことがあります.

それくらい感染症界では著名な先生で「エビデンスは青木先生のマニュアル」には絶大な力があります.

「今日の治療指針」よりも大判で分厚い本なので,読むのにかなり時間がかかりますが,感染症治療の勉強をしていく上で何度この本を開いて確認したか分からないほど頼りになる内容でした.

私は個人的に感染症が好きというのもあって,割と読み込んだほうですが,それでも読破はしていません.

たぶんそこまで感染症が好きでない方は辞書的な使い方をする本だと思います.

それでも,感染症治療の参考書として何か1冊手元に置いておくならば,Sanfordより青木マニュアルだと思います.(「抗菌薬の使い方、考え方」と悩みますが…こっちはまた次回レビューで書きます.)

感染制御専門薬剤師を目指す方でなくとも,日常診療でどの診療科も必ず抗菌薬は使うと思うので,臨床で働く薬剤師であれば勉強しておくべき1冊かなと思います.
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私は英語の勉強も兼ねて,情報収集に英語の論文を読むようにしています.

やはり情報収集において英語で読めるのと,日本語しか読めないのとでは比喩でなく100倍くらいの差があるように感じます.

いやいや英語の重要性は十分わかっているけど,それでもやっぱり英語には苦手意識があるという方も多い事と思います.

また,論文で勉強しようとは思っても,どうも論文の文体が苦手で…という方もきっといらっしゃることでしょう.

「英語は読みたくない.論文で得られる知識は身に付けたいけど,論文を頭から読み込むのはちょっとハードルが高いよ…」という方にぴったりの参考書です.




著明な論文のreviewを日本語でまとめているだけでなく,読み物としても十分楽しめるような筆者の小話であったりクリニカルパールが散りばめられています.

論文を論文として読ませずに,読み物として読ませながら重要な点はひと欠片も取りこぼすことなく完璧に抑えているその文章力には圧倒されます.その文章力をひと欠片でも分けて頂きたいものです.

論文で勉強したい!でも英語は読みたくない!しかも論文特有の文体は読みたくない!という,わがままに全力で応えてくれる参考書です.

そしてもう1点評価したいのは,その網羅性の高さです.

頭の先から爪先まで,ほんとうに幅広く全科的疾患を学ぶことができます.

中には「負傷兵士の治療と輸送」「爆創」など,日本ではあまりみれないような勉強もできます.

私の周りでこの参考書で勉強しているという方は見たことがないですが,まぎれもなく名著だと思います.英語と論文の文体が苦手な方には,めちゃめちゃオススメの参考書ですね.
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