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カテゴリ:薬学生向け

リフィル処方ってなに?

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卒後4年目薬剤師の小林友稀です.

今年は臨床も研究もガンガンできたらいいなと思っています.

よろしくお願いします.

さて,今年初めての記事になるんですが,「リフィル処方」についてです.

ついに,来年度の診療報酬改定から導入されることが決まったそうですね.

そこで,リフィル処方導入に向けて個人的な対策というか,対応をまとめてみたいと思います.


・リフィル処方について
具体的な内容についてはまだ決まっていないこともあるかと思いますが,簡単にまとめてみましょう.

基本的な内容としては,「リフィル=再使用」できる処方箋という名の通りで,1枚の処方箋で複数回の調剤を受けることが出来るようになります.

例えば,6ヶ月分のリフィル処方箋を例に取って患者さんの動きを見てみましょう.

初回:患者さんはまず医療機関を受診します.そこで診察を受けて慢性疾患であり,状態が安定していると判断されたとします.(いわゆる,定期薬の処方を毎回もらっていく患者さんです)

そこで6ヶ月分のリフィル処方箋が交付されます.

患者さんは処方箋を持参して薬局に訪れます.
薬局で薬剤師によって,患者状態の再確認,処方箋監査を経て調剤が行われます.

この際,カナダなど既にリフィル処方が一般的となっている多くの国では何ヶ月分の薬を調剤するかは薬剤師の判断になります.

1ヶ月程度で薬剤師による再診が必要と判断すれば1ヶ月,薬剤師も状態が安定していると判断すれば3ヶ月など,ケースバイケースです.

仮にここでは3ヶ月の調剤にするとしましょう.

従来の処方箋調剤では,処方箋は薬局で保管になるため患者さんの手から離れますが,リフィル処方箋の場合は処方箋も返却されます.残りの日数分の調剤を受けるのに必要なためです.

ここで患者さんは3ヶ月分のお薬リフィル処方箋を渡されて帰ります.

2回目:3ヶ月後,従来であれば薬を貰うのに再度,医療機関を受診する必要がありました.

しかしリフィル処方箋を持っている患者さんは,医療機関に行く必要なく,最初から薬局に来局できます.

そこで薬剤師によって状態の確認がされ,慢性疾患の状態が安定していると判断されれば,再び薬局で調剤を受けることができます.

もし状態の変化があるなど,薬剤師が再受診が必要と判断すれば再受診することになります.

ここでは薬剤師による診察の結果,状態が安定していると判断されたとしましょう.

患者さんは残りの3ヶ月分の薬の調剤を受けて帰ります.
2回目は医療機関を受診することなく,薬を受け取ることができましたね.

ここでは合計6ヶ月分のリフィル処方箋を使い切ったので処方箋も薬局保管になります.

また3ヶ月経った時(初回の受診から数えると6ヶ月後)には,再度,医療機関を受診することになります.


さて,リフィル処方の流れを見てきましたが,患者さんの利点をまとめてみましょう.

(1)従来と比べて,医療機関を受診する回数が減るため,時間的,金銭的な節約になる.

(2)医療機関への受診回数が減らせるため,遠方にある医療機関へ受診しやすくなる.(薬局は家の近くをかかりつけにすれば,遠方に行くのは受診時だけ,普段の薬は近場の薬局で調剤が受けられる)

(3)医師の他に,薬剤師という薬物治療のプロフェッショナルの目で従来より詳細に状態を評価してもらうことで,より質の高い薬物治療を受けることができる.


・薬剤師に求められること
リフィル処方導入にあたって,上記のような利点を患者さんは期待することでしょう.

それを実現するために,我々薬剤師に求められることをまとめてみましょう.

(1)「Do処方(前回と同じ処方内容で調剤すること)」か「再受診」かを判断する力.

(2)慢性疾患の薬物治療管理を,薬剤師単独の責任で行う覚悟

(3)リフィル処方を形骸化させないために,高い倫理観を持ってリフィル処方を行うこと.


この辺りではないでしょうか.

リフィル処方導入により,医師の目を挟まずに,薬剤師単独でDo処方継続で良いかを判断することが求められます.

裏を返せば,それが認められたということは,薬剤師に「薬剤師単独で慢性疾患の薬物治療管理ができる」と評価されたと捉えることもできます.

実際にカナダの研究(RxACTION研究)では,高血圧治療に対して,医師が薬物治療管理をする場合と,薬剤師が薬物治療管理をする場合では,薬剤師による管理のほうが治療成績が良かったというデータもあります.

薬剤師という職は,まだまだ一般の方からは,処方箋に沿って調剤した薬剤を渡すだけだと思われている事が多いと思います.


リフィル処方を通して,薬剤師本来の仕事は「薬物治療」であると,しっかり胸を張って示せるような仕事をしていきたいと思います.

次回から,具体的な疾患ごとに,リフィル処方を受け付けた際の対応を勉強してみたいと思います.

高血圧のリフィルでは,患者さんの何を診てどう評価し,判断するのか.血圧の数値だけで判断するような薬剤師にはなりたくないですよね.

脂質異常症では?糖尿病では?他疾患併存の場合は?腎/肝機能低下もある場合は?

責任自信を持って対応できる薬剤師になるべく,リフィルの本格導入の前に一緒に勉強しましょう!
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当ブログは薬剤師や医療従事者を対象にしたものです.ブログ内容の多くは,理解するために基礎的な薬学,医学の知識が必要です.知識不足による誤解や曲解には当ブログは責任を負いません.提示している症例は,実際にあった症例を基に教育的要素を付加した模擬症例です.また個別の相談や症例相談には応じられません. ご了承ください.その他,ご意見・ご感想は,ブログのコメント欄にお願い致します.

AIが代替できる薬剤師業務と出来ない業務

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卒後4年目薬剤師の小林友稀です.

今日はちょっとだけ医療から離れて,AIについてのお話です.
ぼくはAIについて造詣が深いわけでは無いので,その点はご理解のほどお願いします.

AIに関しては以前,記事にしたことがあるのでリンク貼っておきます.こちらも是非.

ちょうどAIに関する本を読んだので,薬剤師の仕事のうちAIで代替できる部分と,代替できない部分を考えてみました.


・AIが得意な教科は?
『AI vs 教科書が読めない子どもたち』という本に面白い研究があります.

AIが東大入試を突破できるかという試みなのですが,2013年の代ゼミセンター模試では,AIは偏差値45でした.学習を進めること3年の2016年には偏差値57.1まで上昇しました.

顕著な伸びをみせた科目は何でしょうか.
なんとなく予想がつくとは思いますが,最も高偏差値となった科目は数学です.

苦手科目は英語や国語だったそうです.

一般的な認識となっている事だと思いますが,やはりAIは論理的問題は得意なようですね.


・AIはなぜ英語や国語が苦手か
一方,英語や国語が苦手な理由は何でしょうか.
文系科目に共通するのは「読解力」です.
AIは文章を読んで内容を理解するという行為ができません.

例えばiPhoneに搭載されているSiriに「近くの美味しい焼き肉屋さんを教えて」といえば,近所にある焼き肉屋さんを表示してくれます.

しかしこの処理は,Siriが文章を理解して結果を表示しているのではなく,単語を拾い上げて,その組み合わせから統計的に正しそうな答えを出しているだけとのことです.

つまりSiriには近所にある美味しい焼き肉屋さんがどこにあるかという思考はできず「近所」「焼き肉屋」「教えて」のような単語の組み合わせから,近くにある焼き肉屋さんを表示しているだけなのです.

例えば「この近くのまずい焼き肉屋さんを教えて」と言っても,先ほどと同じお店も表示されるようです.

AIには「まずい」が理解できません.「まずい」を理解させるためには,「まずい」を数式で教え込まないといけないようです.これを学習させるのには膨大な労力と資金がかかります.

このように,一見,思考が必要な作業ができるように見えても,実はできておらず,論理や確率,統計の作業の組み合わせてで何とか答えを出力しているだけのようです.

この本の著者で数学者の新井紀子氏によれば,AIが1番苦手とするのは高度な読解力と常識,人間らしい柔軟な判断が要求される仕事だそうです.


・薬剤師業務のうち,AIで代替できるもの
では薬剤師業務でAIが代替できるものには何があるでしょうか.
処方箋の形式的な監査などは任せられそうです.
例えば後発変更不可欄にレ点ついているのに処方医の押印が抜けていたり食前服用の漢方が食後服用になっていたり,併用禁忌の薬が処方されているなどです.

その他,AIではないですが,機械化,非薬剤師スタッフの活用ができるのはピッキング,一包化調剤,現行法では機械化のみですが軟膏や水剤の調剤なども代替できると考えられます.


・AIで代替できないもの
薬剤師業務のうち,AIで代替できないものは何でしょうか.
それは薬剤師の専門知識が必須であり,かつその知識を目の前の患者さんに合わせてベストな治療となるように調整する仕事でしょう.

例えば,一包化調剤の作業自体は機械化できますが,一包化する/しないの判断は薬剤師でなければ出来ません.

目の前の患者さんに一包化が必要か必要で無いかの判断を,仮にAIにしてもらうとなると,一包化が必要となる全てのケースを学習させ,必要とならない全てのケースも学習させ,なおかつ目の前の患者さんがどちらのケースをどの程度持っていて,それらを総合的に判断して一包化の要否を決める,という思考をしてもらうことになります.

加えて,例えば施設入所の方であれば,本人というより施設側の管理の面で一包化の要請があったりすることもあります.

これらの情報をAIは自ら取りに行くことができません.そして先例主義的な対応ではなく,個別例ごとに判断が必要な作業となるので,AIは判断することができなくなります.


・処方監査も本当に任せられる?
他にも到底無理だろうなという仕事はたくさんあります.
先ほど,形式的な処方監査であれば任せられると言いましたが,本当にそうでしょうか.

「押印が抜けている」程度の本当に形式的な内容であれば可能でしょう.

しかし漢方の用法はどうでしょうか.
漢方薬は確かに添付文書に則った保険診療のルールでは基本的に食前(あるいは食間)の服用となっています.

しかし漢方の種類によっては,食後服用の方が効果があるものや,食事に関係なく,症状に合わせて服用させる方が効果的なものもあります.

患者さんの病態に合わせて,最適な服用方法を提案するのはAIには難しいと思います.


併用禁忌の処方についても,全例で止めなければいけないわけではないケースもあります.

例えばオランザピンは糖尿病(既往含む)には禁忌です.
目の前の患者さんが糖尿病あるいは糖尿病の既往があるかというのは,AIに判断できることなのでしょうか.また,臨床的にオランザピン投与に耐えうるのか,リスクの方が高くなるのかの判断は難しいのではないでしょうか.


逆に禁忌でなくても,止めなければいけないケースもありますが,そういった臨床判断も難しいのではないでしょうか.

これは先日,実際にあったケースですが,認知症の患者さんへのドネペジル処方で,易怒性が強い患者さんでは避けた方が良いケースもあります.

そのような場合は,他の抗認知症薬への変更を提案すべきでしょう.ちなみに先日の例はメマンチンに変更となりました.


長くなってしまいましたが,普段からしっかりと臨床的な判断を繰り返して,目の前の患者さんに最適な薬物治療が行われるような仕事をしてる薬剤師は,淘汰されることはなさそうです.
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当ブログは薬剤師や医療従事者を対象にしたものです.ブログ内容の多くは,理解するために基礎的な薬学,医学の知識が必要です.知識不足による誤解や曲解には当ブログは責任を負いません.提示している症例は,実際にあった症例を基に教育的要素を付加した模擬症例です.また個別の相談や症例相談には応じられません. ご了承ください.その他,ご意見・ご感想は,ブログのコメント欄にお願い致します.

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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

先日の症例2の内容を友人が見てくれて,いろいろと討論をしました.

討論している中で「脱水の所見」についてフォーカスし,脱水時に頻脈になる原因について学生時代の資料なんかひっぱりだして勉強していました.

その内容が結構,薬学生にも有用だと思ったので,シェアしたいと思います.
循環の勉強をしている方,ぜひ一緒に勉強しましょう.


本日のテーマは,「脱水時にはなぜ頻脈になるのか」です.


基本からゆっくり見ていくことにしましょう.

臓器が,それぞれの役割を担って生命活動を行う際に,必要なものが血液です.

肺で酸素化された血液は心臓から駆出され,動脈を介して,各臓器に運ばれます.

この,血液が臓器に運ばれる際の原動力になるのが動脈圧です.

圧力の話が出てきてしまうので,ここで数式が出てくるのですが,心配はいりません.

皆さん,名前くらいは聞いたことのある「オームの法則」です.

動脈圧(V)=抵抗(R) × 流量(I)

でしたね.

つまり,臓器血流は各臓器の血管抵抗(R)と心拍出量(I)の,2つの要因で決まるわけです.

ここで初学者は「心拍出量は,心臓からでていく血液のことだよね.それは何となく理解できるけど,血管抵抗ってボンヤリとしか思い浮かべられないな」となります.

なりませんか? 私はなりました.

そこで血管抵抗について見てみましょう.

皆さん,中高のときにやった電気の授業は覚えていますか?
あそこでも同じようにオームの法則がでてきました.

電気の話で抵抗とは,「電気の流れにくさ」を表していました.

血管でも同じです.

血管抵抗とは,“血管という管のなかを流れる,血液の流れにくさ”の指標です.

では,血液の流れにくさを決める要因には何が思いつくでしょうか.

なんとなく“ドロドロ血”だと流れが悪くて,“サラサラ血”だと流れが良さそう,なんてイメージありませんか.健康番組などでも良く出てくる表現ですよね.

1つ目はこの「血液の粘度」です.

血管の長さはどうでしょう.ホースが長ければ長いほど,水の流れはホースの壁にぶつかって勢いが衰えていきます.

血管が長いほど,抵抗も大きいといえますね.
2つめは「血管の長さ」です.

血管の太さはどうでしょう.太いホースと,細いホースです.
これはイメージ付きやすいですよね.細いところを無理矢理通るほうが大変ですね.

血管が細いほど,抵抗も大きいといえますね.
3つめは「血管の太さ(血管径)」です.

次にまた数式が出てきますが,あんまり気にしなくていいです.
なんとなく眺めて読み進めて下さい.

血管をホースに例えましたが,このような管腔を流れる流体の科学式として有名なのが「Hagen–Poiseuille flow」と呼ばれるものです.

薬学生の皆さんは循環器の講義でなんとなく「ポアズイユ」って名前だけでも聞いたことがあると思います.

流量(Q),管の半径(r),管の両端の圧較差(ΔP),流体の粘度(η),円管の長さ(I)の関係を,

ΔP=8ηI×Q÷πr^4 ・・・式①

で表すことができます.

まだブラウザの戻るボタンを押すのは早いです.試験のときは覚えた方がいいんでしょうが,ここでは「はえ~」くらいの気持ちで流し見で良いです.

そして先ほどの,オームの法則がありましたね.

あれの形を少し変えると,臓器を流れる血液量(Q),血流を生み出す圧較差(ΔP),血流に対する抵抗(R)を用いて,

ΔP= RQ ・・・式②

と表せます.

式①を式②に代入すると,

R=8ηl÷πr^4 ・・・式③

になります.

皆さんに見て欲しいのはこの式③だったんです.

これをみると,血管抵抗(R)を構成する要因が3つともちゃんと入っていますよね.

・血液の粘度=η
・血管の長さ=l
・血管の太さ(血管径)=r


さて,その中でも,最も血管抵抗に大きな影響力を持つものはどれでしょうか.

式③をみると,rに4乗が付いていますよね.

例えば,血管径が半分の狭さになるとすれば,血管抵抗は16倍になる,ということです.

つまり血管径が最も血管抵抗に寄与していることが分かります.

実際に,体内循環において,人体は血管径を調節して臓器血流を選択的に調節する機能を備えています.人体ってすごい.


続けて静脈について少し見てみましょう.

よく「静脈は容量血管」なんていう言葉を聞いたことがある方も多いと思います.

そうなんです.静脈を流れている血液(静脈環流:venous return,VR)は心臓から出ていく血液(心拍出量:cardiac output,CO)を決める重要な因子なのです.

実は血液のほとんどは静脈に存在しており,総血液量の70%ほどは静脈中に存在します.

総血液量(VT)は血管の壁に圧力をかけるものと,かけないものに分けて考えられます.

血管壁に圧ストレスをかけるものをstressed volumeでVs,圧ストレスをかけないものをunstressed volumeでVuといいます.

正常な状態ではVsはVTの25~30%程度にあたります.

Vsは循環血液量が減ると,当然その圧力もさがるので低下し,循環血液量が多ければ,圧力も増えるので増加します.

このVsと血管のコンプライアンス(compliance,C)によって,全身の血管が作り出す弾性力を表すことができます.

これを平均循環充満圧(mean circulatory filling pressure,MCFP)といいます.

そしてMCFPは圧ストレスをかけるVsと血管コンプライアンスCの増加を用いて

MCFP=Vs÷C

と表せるんですが,血管コンプライアンスはほとんど変化しないので,VsによってMCFPは決められると考えて差し支えありません.

MCFP≒Vs

要は,MCFPとVsが正比例関係にあると思ってもらえればバッチリです.

さあ,めちゃくちゃ長くなってしまって,この話がどこから始まったか忘れてしまった人がほとんどでしょうが,今日は「脱水時にはなぜ頻脈になるのか」でした.

ここまでの知識で,これが説明できるようになっているハズです.

それではまとめていきましょう.

脱水ということは,循環血液量が減少している状態を指しています.

では,循環血液量が減少すると,平均循環充満圧(MCFP)はどうなったでしょうか.

循環血液量が減少すると,Vsは低下するというのは,さっきやったばかりですね.

そしてVsが低下するということは,それと正比例の関係にあるMCFPも低下することになります.

MCFPは圧力ですので,圧力が下がると,静脈内を流れる血液,静脈環流量はどうなると思いますか?

圧力が下がれば,今日の最初の方にやった式②のうち,血流を生み出す圧較差が小さくなるということなので,静脈還流量も下がります.

静脈環流量が下がれば,心臓へ戻ってくる血液量が減るということなので,当然,心臓から出ていく血液量(心拍出量)も下がりますよね.

これが,脱水時に起きている体内の変化です.

では,人体はそれを是正するためにどんな代償反応をするでしょうか.

心拍出量が下がっているのだから,より強く(心収縮増強),より早く(頻脈)血液を全身に送り出そうとしますよね.

これが脱水時に頻脈になる理由です.

ちなみに,人体はMCFPを決定づけるファクターとして,RAA系バソプレシンなどのホルモンによる調節機構を持っています.

だから降圧剤としてRAA系が標的になったり,体液貯留に対してバソプレシン受容体が標的になる薬が開発されているんですね.


さて,お疲れ様でした.

今日は,臨床とは違って基礎的な内容のお話でしたが,こういった知識も臨床で物事を考える際に必ず役に立ちます.

解剖や生理の知識は人間がDNAレベルで進化したりしないかぎり,変わらないものです.

患者さんを前にして病態や治療薬で悩んだときに,こういった解剖や生理の知識は頼りになります.

もちろん最新のガイドラインや臨床研究も大切ですが,それもすべてが基礎となる解剖や生理に根拠があります.

これからも,臨床とリンクするような基礎知識について勉強し直したときは,この場で皆さんと共有できたらと思います.
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卒後1年目で読んだ参考書 全21冊の総合レビュー

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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

卒業して薬局で臨床業務に取り組むようになって1年が経ちました.

この1年で読んで勉強した参考書すべてをもう一度(ざっと)読み返し,いろいろな知識と1年分の経験が身についたうえで,改めてレビューをしなおすことにしました.

レビューをしなおすのに必要な分ではありますが,もう一度買った参考書全てを読み返したので,この記事1本書くために丸2ヶ月かかりました(笑)

それだけ本気でレビューをしなおしたので,たくさんの方の参考になればと思います.


本のタイトルがリンクになっているものは,以前に参考書レビューで取り上げたものです.細かい評価や,初めて読んだ時の感想を読みたい方はぜひリンク先の記事もご参照ください.


では,参ります.





第1位:フレーム法で、もうコワくない 総合内科 ただいま診断中



この1年で最も読み返した頻度の高かった本だと思います.

卒後1年目の新人薬剤師から,病院から薬局へ転職される方にも間違いなくオススメです.個別レビューでも書きましたが,私が薬剤師業務で最も大切だと考えている「監査力」を身に付けるのに大いに役立つ1冊です.

「フレーム法」と「Red flag」の考え方というシンプルでありながら汎用性の高い勉強方法で,無限に思える患者主訴から,的確に病態を紐解いていく考え方は素晴らしいです.

この知識をもって「今日はどうされましたか?」と聞くのと,ただ何となくルーチンで聞くのでは天と地の差が出ます.

当たり前ですが,気付けなければスルーしてしまう主訴や症状に気付くことができるようになって,そこからより適切な治療薬へ変更して良くなった,なんて薬剤師業務の1番のやりがいを感じる経験が出来たのもこの本のお陰だと思っています.まさに必携といえる1冊です.




第2位:ジェネラリストのための 内科外来マニュアル



1位にするかめちゃめちゃ悩んだ1冊です.ただ初学者には1位の本の方がとっかかりやすいかなという理由で2位にさせていただきました.

1位の本は主に「考え方」を学ぶ本ですが,本書はそれを身に付けた後に,実際にさまざまな主訴から実践的に鑑別を絞り込んでいく力を身に付けることができる本です.

また,薬局でメインとなる継続外来の患者への評価の仕方は本書が断トツで優れています.

初版を薬局実習で使って以来,ずっと手元において読み込んできた参考書です.

ただいま診断中で「フレーム法」と「Red flag」を身に付けて,本書でよりブラッシュアップした初診外来と継続外来での考え方を学べば、ある程度のケースはミスなく対応できるようになります.

薬局外来を行うに当たっての最低ラインはこの上位2冊を理解していることかなと感じています.




第3位:Dr.ウィリス ベッドサイド診断





ある程度の症候学や診断学を学んで,参考書も何冊か勉強してきて「ある程度の知識が身についてきたな.もう大体どんな症状や主訴を聞いても評価できるようになってきたぞ」と,今思えば少し傲慢な考えを持つようになっていた私をぶちのめしてくれた良書です.

本書を読み始めて,ある程度勉強してきたはずなのに,一体今までの自分がどれだけの症状や所見を見逃し続けてきたか,得られた情報をどれだけ活かしきれていなかったかに驚きました.

上位2冊で学んだ後に,もっと深くそれぞれの症状や所見を理論的に学ぶのに最適です.

読破して勉強するのは大変ですが,投薬時の問診で疑問に思った症状や主訴をあとで読んでみて,そうやって評価するのか!とかそういう意味のある症状だったのか,じゃあ次回はこれを確認したほうがいいな.という風に勉強するのがオススメです.

薬物治療を考える上で不可欠な病態を,薬局という制限の多い空間で病歴と身体所見から紐解いていく力を身に付ける最高の参考書です.上位2冊を読破した後は絶対にお勧めです.




第4位:ホスピタリストのための内科診療フローチャート





私はめちゃめちゃ処方提案する薬剤師なのですが,私が提案する処方の方が良いですよ!と処方医に示すための証拠というか,根拠となる文献を探すのによく参照しています.

EBM全盛の医療において,やはり質の高い論文や研究を根拠に処方提案ができたら素晴らしいですよね.そのうえで経験的な要素や,実臨床ではこうすると上手くいくという情報も持っていたら鬼に金棒です.本書はEBMがぎっしり詰まっている上にクリニカルパールも随所にあり,1ページ1ページの質の高さに圧倒されます.

ある程度の知識を身に付けてからじゃないと,本書を100%活用するのは難しいかもしれませんが,根拠として示されている文献まであたって勉強するとものすごく知識が深まります.

個別レビューを書けていなかったので,近いうちに書いてリンクに貼っておきます.




第5位:ジェネラリストのための内科診断リファレンス




1つ1つのボリュームはフローチャートに軍配が上がりますが,網羅性の高さと,何より記載されているエビデンス量に関しては本書のほうが,というより今まで読んできた中で最もEBMに基づき,最もエビデンスの豊富な参考書ではないかと思います.

疾患に対して,重要な臨床情報,臨床所見は何なのか.そしてそれがどの程度の診断価値を持つものなのかが明確に数字で示されているので,とてもインパクトがあります.

この本も処方提案のエビデンスづくりに重宝しています.

表やグラフが多い点もポイントで,視覚的に理解するほうが頭に入るんだよなって方にも間違いなくオススメですね.




第6位:トップジャーナルから学ぶ 総合診療アップデート





個別レビューにも載せましたが,論文をベースに勉強したいけど英語で読みたくないというワガママに答えてくれる名著です.

そして分厚い本なのにスイスイ読めてしまえるほど,読み物としても素晴らしい参考書です.

必須とか,必ず知っておくべき!というスタンスより,こんな研究があるんだよ,とかこんな治療が実は世界スタンダードなんだよ,というのを知る目的で読む本かなと思います.

それでも読んでいるとハッとさせられることも多く,間違った治療を見逃して通してしまっていたなと反省することも多かったです.




第7位:キーワードから展開する 攻める診断学




ちょっとテイストの変わった参考書というか,今までベースにして勉強してきた参考書には載っていないものも取り上げてくれる参考書というイメージです.

まさに痒いところに手の届く本.という立ち位置ですね.

レジデントノートの増刊版ということもあって,そんなに難易度が高いわけでもなく,たぶん薬学生レベルから読みこなせる本だと思います.解説も充実していて読みやすいです.

「見逃してはいけない疾患」と「よくある疾患」の鑑別を付けられるようにするのは,薬剤師として臨床で勤務する上で間違いなく必須のスキルですが,体系だって学ぶことが少なかったと思うので,学生の副読本としても良いかもしれません.




第8位:もう困らない 救急・当直ver.3




病院勤務の方や,救急の場で働いている薬剤師であれば間違いなくトップである参考書ですね.

発熱や咳,痰という毎日診る症状から失神や痙攣,胸痛,急性腹症などのemergencyな症状まで幅広く網羅して学ぶことができるので,薬局薬剤師にも十分に勉強する価値がある内容です.

薬剤師として,必ず気付けなければいけない緊急度の高い疾患を間違いなく否定すること.その上でアンダートリアージとならない治療を行う力を身に付けることができます.

医療に100%は絶対にないので,なるべく拾い上げる網を細かくする努力は医療者全員がすべきです.

薬剤師も薬物治療を行う最後の監査役として,最も目の細い網になれるよう本書で勉強するのは間違いない選択肢だと思います.




第9位:診察エッセンシャルズ




症候学や診断学を学んで鑑別疾患を想起できるようになっても,成書で確認しないとなかなか不安は取り除けませんよね.

すぐに確認したくても,成書を持ち歩くのは現実的ではありませんし,白衣のポケットサイズの本があればいいなと思っている方にぴったりの1冊です.

鑑別疾患ごとの典型的な経過や,その症状がこういう病歴を辿って発症していたらより疑わしいだとか,ほかにこういう症状も出ていることが多いよ.などの解説が細かく示されています.

若干,表現が分かりにくい部分もありますが,それでもこのサイズでこの充実性は間違いなく買いの1冊です.




第10位:極論で語る総合診療




万遍なく全身の薬物治療を勉強する薬剤師として,特に新人のうちは学ばなければならない事が膨大にあります.そこで,まずは頻度の高い疾患に対してしっかり対応できるようにする事が大切ですよね.

診療科を限定せずに,どんな診療科から患者さんが来ようと,完璧な薬物療法が提供できるようにすることが我々,薬局薬剤師の仕事です.

そういう意味で,いろいろな専門領域の最も頻繁に遭遇する疾患の薬物療法について学ぶことが,優秀で頼りがいのある薬剤師になる第1歩なんではないかと思います.

本書はそんな薬剤師になるために十分な知識を身に付けることができる1冊です.

なんというか内科外来診療の常識を身に付けることができる,というのが1番しっくりくる感覚だと思います.




第11位:よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!




コンセプトや内容は間違いなく初学者向けですし,そもそも薬剤師向けに書いてある本なので良いかなと思って購入しました.

基本的には薬局に来局した患者さんをOTC対応とするか,受診勧奨するかのトリアージを身に付ける力をつけるものです.

残念なのはほぼ全ての対応で「受診勧奨」が答えになっている点です.

薬剤師には適切な診療科に振り分けて受診勧奨させるということをして欲しい,という気持ちで書かれているからでしょう.

OTCや,薬剤師が処方できるBPCで対応できる疾患や症状についてスポットを当てた方が,より実践的で素晴らしい内容になると思いますが,薬剤師にそんなことができるなんてきっとまだ誰も思っていないので,しょうがないのかなとも思います.

ちょっと視点がずれているのが残念ですが,学べる内容としては間違いなく素晴らしいです.




第12位:内科診断学

内科診断学 第3版
福井 次矢
医学書院
2016-02-18



内容の充実性としてはもっと上位にランクインさせたいのですが,どうしても辞書的な活用の仕方しかできていません.

教科書として優秀なので,時間のある学生時代に読み込んだりするとまた評価は違うのかなとも思います.

今でも時々開いて,確認するのに使っています.




第13位:内科レジデントの鉄則




とても有名な本で,内容も文句なしの素晴らしいのですが,薬局薬剤師としてはどうしても優先度は下がってしまいます.

病院薬剤師であればトップ3に入る良書だとは思います.

基本的な入院管理下での内科全般を学ぶことができます.外来でも活用できる知識も身に付けられますし,基本的な治療のスタンダードを学べるのでさすが著名な参考書だけあるなという出来でした.

病院実習前の薬学生には絶対に読んで欲しいですね.




第14位:内科病棟・ER トラブルシューティング




内科レジデントの鉄則で基本を抑えた後に読むのにベストな参考書です.

より実践的で,トラブルシューティングと謳うだけあって「何かあったとき」「うまくコントロールできていないとき」にどうすればいいかを学ぶことができます.

薬剤師としては,そんなトラブルへの対応を知ることで未然にトラブルを防げるように目を光らせるのが本書の活用の仕方だと思います.




第15位:UCSFに学ぶできる内科医への近道





若干の内容の薄さはありますが,あまりたくさん成書とか読み込むようなガチの勉強はちょっと…という方にはいいかもしれません.

これ1冊で最低限の事はしっかりと網羅できているとは思いますし,エビデンスを大事にしながら臨床経験も織り込んで記載してある姿勢は素晴らしいと評価できます.

病院勤務で力を発揮できる1冊ですね.ポケットに入るのも評価できる点です.




第16位:総合診療・感染症科マニュアル




これも著名な参考書ですね.病院実習の際にかなり重宝しました.

白衣のポケットの中でも,胸ポケットに入るくらい小さい本です.しかし内容の充実性は素晴らしく,とても勉強になる話が満載です.亀田の精神が奥深くまで染みわたっている1冊ですね.

ただ小さすぎて読むのが大変なのが難点ですね.

医療を行う上での姿勢を身に付けるためにも一度は読んで欲しい参考書ではあります.




第17位:薬剤師レジデントマニュアル




レジデントマニュアルシリーズに薬剤師版ができた!と喜んで購入したのですが,事前の期待値が高かったせいもあるか,読んでみてがっかりした内容でした.

大学で学ぶ内容にすら達しておらず,学部教育以下の内容だったのが残念ですね.




第18位:薬剤師レジデントの鉄則

薬剤師レジデントの鉄則
橋田 亨
医学書院
2016-04-18



これもレジデントマニュアルと同様で,大学教育で学ぶ内容を水割りにして薄めたような内容でした.これを新人の薬剤師が読んで「これが薬剤師の仕事なのか」と思われると思うと残念でならない内容です.




第19位:外来医マニュアル





携帯性のある参考書で,外来のお供にしたいと思って買った参考書です.

特段勉強になる内容もなく,かぜに第3世代セフェムを推奨している点で私とは合わないなと思いました.字も小さいですし,紙面の関係でどうしても内容を絞らざるをえないのは分かりますが,その取捨選択が間違えているなと感じた1冊でした.




第20位:在宅医マニュアル





外来医マニュアルと良くも悪くも同じ感想ですね.

症候編も疾患編も内容が薄いので,どうせなら緩和ケア編をもっと充実させた方が良かったんじゃないかなと思いました.




第21位:薬効別 服薬指導マニュアル




服薬指導を改めて勉強してみようと購入した1冊です.

売り文句に「フィジカルアセスメントのチェックポイント」を加筆しました!とありましたが,いざ内容を読んでみると「どこに書いてあるの?」と思うくらい少なく,しかもその内容も判で押したような内容で全く参考にならなかったです.

申し訳ないですが,これほど買って無意味だったなと思う参考書も珍しいくらいの出来でした.





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本当に思った事をすべてぶつけて書いたレビューです.


基本的には薬局薬剤師としてのランキングですが,薬学生にオススメの順にソートした記事を書いたりもしたいと思っています.

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当ブログは薬剤師や医療従事者を対象にしたものです.ブログ内容の多くは,理解するために基礎的な薬学,医学の知識が必要です.知識不足による誤解や曲解には当ブログは責任を負いません.提示している症例は,実際にあった症例を基に教育的要素を付加した模擬症例です.また個別の相談や症例相談には応じられません. ご了承ください.その他,ご意見・ご感想は,ブログのコメント欄または下記メールアドレスまでお願い致します.
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世界一潤沢に薬剤師がいる国で、なぜ薬剤師不足が起こるのか

カテゴリ:
卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

またしばらく更新が空いてしまいました.

いろいろと良縁に恵まれて,Rotary Clubの若手組織であるRotaract Clubに入らせて頂きました.

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薬剤師としての活動はもちろん,Rotaractの一員としても社会奉仕活動をしていけたらと思います.


今日は「世界一潤沢に薬剤師がいる国で、なぜ薬剤師不足が起こるのか」という日経DIのInside Outsideの記事からです.

ぜひ記事の内容をご覧いただきたいのですが,本当に薬剤師不足問題は深刻です.

一見,相反する「余剰人員」「人員不足」同時発生する問題は,薬剤師業界だけではないのです.

AIなど新たな技術革新が盛んなIT業界でも,新しい技術についていけず,55万人の人員不足と10万人の余剰人員が同時発生しているようです.

この問題についてIT業界では「労働者の再教育プログラム」を充実させることで対応しようとしています.

われわれ薬剤師業界に目を向けると,いわゆる計数・計量調剤といった対物業務に固執した古い考えの薬剤師や,疑義照会や処方提案に消極的な薬剤師が多かったりと,やはり新しい薬剤師業務についていけない薬剤師が多いのも事実です.


高校まで同じように数学や物理,化学を学んできた人たちが,それぞれ薬学部や医学部へ進学して,薬剤師,医師になる事から分かるように,薬剤師を薬剤師たらしめる専門性は大学教育の中にあります.

臨床教育を受けていない薬剤師にいきなり臨床にシフトしろと言ったところで現場は変わるはずがありません.

この業界にも「薬剤師の再教育」の場が絶対に必要ですが,それよりもまず意識を変えるだけで変わる事はたくさんあると思います.

いくら臨床教育を受けていないとは言え,薬剤師免許を取れるほど優秀な人であれば,意識1つ変えるだけで自ずと行動も変わり,必要な勉強をし始めるのではないかと思います.

薬剤師の仕事は何かと問われれば「患者の薬物治療に問題がないかを確認し、問題があれば介入して解決する役割であり、患者の薬物治療に責任を持つことだ。」と記事中にありますが,臨床にいる全薬剤師が共通してこの認識を持つことができたら,それだけでたくさんの事が変わっていくと思います.

私がさまざまな薬剤師と接していて,最も足りないなと思うのは「自分で判断する力」です.

長らく医師中心どころか,患者さえ置き去りにして医師のみで医療を行っていた時代の弊害か,薬剤師が治療に介入することに抵抗感を覚えている薬剤師が多いのではないでしょうか.

しかしそんな中でも,近年の諸先輩方の懸命な努力のおかげで治療に介入していく薬剤師も増えてきたことも同時に感じています.

残念なのは,治療介入しようとしない薬剤師だけでなく,治療介入する薬剤師のなかにも「最終的に決めるのは医師でしょ」という考えをもつ方がいることです.

医師法22条の処方箋交付義務と薬剤師法24条の疑義照会義務(監査権)を考えれば分かる事ですが,より後に判断をするのは薬剤師です.薬剤師が通せばその治療は患者に行われますし,薬剤師が通さないと決めたら患者はその薬物治療を受けないということになります.

きっと「そんなの現実的じゃない」と思われる方が多いでしょうが,私が言いたいのは「治療の決定権と責任は間違いなく薬剤師にある」という事です.

つまり,その治療内容で良いのか,ダメなのか,ダメだとしたら最適な治療薬は何なのかを決める力が薬剤師には不可欠だということです.

よく疑義照会で聞くフレーズに「〇〇はこういう理由で不適切だと思うのですが,それでよろしいですか」「〇〇は使えないですが,どうしましょうか」というニュアンスの疑義があります.

薬剤師であり社会人として,相手へのマナーとして直接的な表現を避けているのかなとも当初は思っていたのですが,どうもそうじゃなく,本当に医師に判断をゆだねている薬剤師がいるんだなとびっくりしました.

不適切なものを通すのは疑義照会義務違反ですし,「どうしましょうか」ではなく「こうしましょう」と提案するのが正しい疑義照会です.

この辺りも,薬剤師が自分で判断しようとしない,判断してはいけないと思っている思考が透けて見えます.

まずはこの思考を捨てて,しっかり目の前の患者さんに向き合って,治療に責任を持つという意識をもつことが,薬剤師の再教育の第一歩だと私は思います.

最初の一歩は本当に小さな一歩です.

他人任せにせず,しっかりと自分の責任で薬物治療を患者さんに届ける意識をもつだけ.

たったこれだけの事です.

そこから必要に応じてさまざまな勉強が必要になりますが,それはその時々に合わせて一つずつこなしていけばいいのです.

私が患者の立場だったら,治療内容に介入もせず責任も負おうとせずに薬だけ渡していたり,数を間違えない事や種類を間違えないことだけに力を注いでいる薬剤師なんかに症状を話そうなんて思いませんからね.

そう遠くない未来に「え,血液検査の結果なんて薬剤師に見せるの?」と驚かれたり,「なんで薬剤師に症状なんか話さなきゃいけないんだ.もう医者に全部言ってあるわ」と言われたり,「急いでるから早く薬だけ渡して」なんて言われない日が来ることを願って,努力し続けます.
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バイタルサイン講習会を開催しました

カテゴリ:
卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

5/12にバイタルサイン講習会を開催しました!

講習会を開催すると決めてから,プレゼンする全てのスライド,実技指導の細部に至るまで,参加していただいた全員の方が「バイタルを取れるようになる」「薬剤師がバイタル・フィジカルアセスメントをどう活かしていくか理解できる」ようになることを目標に準備に準備を重ねてきました.

実施後のアンケートでは,ほとんどの参加者の方に「大変よく理解できた」とのご評価を頂き,また「今までたくさんの講習会で勉強してきましたが,今日の小林先生の講習が1番分かりやすいです!」と言っていただけたり,実りのある講習会となったようで嬉しく思います.

今後も定期的に講習会を開催し,そのたびに最新かつ信頼できる情報を取り入れ,常に最先端の医療が提供できる薬剤師になれるような講習会にしたいと思います.

当日ご参加いただいた皆様,サポートして頂いた先生方,本当にありがとうございました!
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卒後2年目薬剤師の小林友稀です.

年度が変わり,4月から卒後2年目となりました.

今年度も,昨年以上にしっかり勉強して情報発信していくので,よろしくお願い致します.

近況としては,緑豊かな山々と綺麗な水に恵まれた岐阜県から,コンクリートと人々で溢れかえった東京へと戻ってきました.

将来的に考えている開業にむけて,経営についても本格的に学ぶ環境を整えました.

2年目からは薬剤師としても,社会人としてもパワーアップできる環境ができたので,しっかり取り組んでいこうと思います.


さて,表題の0402通知に関してです.
「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号)ですが,薬剤師業界を大きく揺るがす通知!という意見もあれば,現状の追認をしただけだという冷めた意見もありますね.

個人的には前者だと思っていますし,前者だと捉えて欲しいです.

私が最も危惧している事は「忙しい業務が調剤助手へ委託できて良かった良かった」となってしまうことです.

今までの対物業務(ピッキング,在庫管理等)は「調剤ではない」と明確に示されたわけですから,薬剤師としては本来の調剤業務にしっかり時間を使える=調剤業務の質を上げていくという方向に考えなければなりません.

より患者さんの薬物治療を安全で,有効性の高いものにしていく仕事へ集中できる時間が増えたと捉えるのが正しい解釈の仕方でしょう.


今まで散々聞いてきた「薬剤師って薬取ってくるだけでしょ?」という一般の方からの声がありましたが,「いやいや,薬取ってくるのは薬剤師じゃないよ」と答えられるようになったわけです.

「え,じゃあ薬剤師って何をしているの?」と聞かれた時に「薬剤師は処方と患者状態を評価して,最終的にその薬物治療で良いかどうか判断する仕事」だと答えられるようにならなければいけません.

ピッキング等の対物業務が薬剤師の手から離れることで「薬剤師の仕事がなくなる!」と騒いでいるのは全く薬剤師業務を理解していない人なので良いとして,仮にそれで本当に無くなってしまうという薬剤師がいるならば,そんな薬剤師は淘汰されるべきです.


薬剤師の配置基準の見直しも話題になっており「一律に処方箋40枚に薬剤師1人ということの合理性がない」と,配置基準の見直しが検討されているそうです.

どのような方向で基準の見直しが行われるかは定かではありませんが,対物業務の負担が減る分,薬剤師1人当たりの応需枚数は増えると考えるのが自然ではないでしょうか.

となると,薬局では抱える薬剤師の数は少なくて良くなり,かつ対人業務にしっかり取り組んで,実績のだせる薬剤師が求められている事を考えると...

激変する時代の流れに溺れて消える薬剤師とならないよう,しっかり勉強して存在感を示せる薬剤師になりたいですね.

そんな志のある薬剤師,薬学生の皆さんと共に学んでいけるブログにしていきたいと考えています.

今後とも,どうぞよろしくお願い致します.
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バイタルサイン講習会を開催します.

カテゴリ:
卒後1年目薬剤師の小林友稀です.

最近は薬剤師がバイタルを取ることも珍しくなくなってきました.

もちろん診断のためではなく,薬物治療の効果を確認するため,副作用の発現がないか確認するため,病態の評価のためなど,いずれも「薬剤師が薬物治療の評価を行うためにバイタルを取る」ことは何ら問題はなく,むしろ積極的に行なっていくべき事として薬学教育にも取り入れられました.

しかし,一昔前には「薬剤師は患者に触れてはいけない」という考えがまことしやかに広まっていた時代もありました.

そんな中「これからは薬剤師に必要なスキルであることは分かるけど,急にバイタル取れって言われたって...」と思われてる方もたくさんいらっしゃる事でしょう.

バイタルを取る手技に不安がある.バイタルを取ったあと,それをどう評価すればいいか分からない.という方も多いでしょう.


また,バイタルだけでなく,普段行なっている調剤に限界を感じている方.薬剤師として本当はもっとこうしたいという思いはあっても,様々な理由でそれが出来ていない方.

疑義照会も最低限.トレーシングレポートも書いたことが無い,あるいは残薬調整の報告のみなど,イマイチ活用できていないという方.

そんな様々な側面から薬剤師としての,自身の働きに限界を感じ,閉塞感を覚えている方に,そんな現状を打破するお手伝いをさせていただけたらと思います.

5月12日(日) 13:00より,東京駅近くのアットビジネスセンター東京にて,私が講師を務めます「バイタルサイン講習会」を開催いたします.

→日本在宅薬学会 バイタルサイン講習会 参加申し込み


参加して頂いた“全員に”バイタルサインが不安なく取れるようになって頂きます.とったバイタルを正しく評価して,薬物治療へどう活かせばいいのか,その方法をお伝えします.

在宅業務はもちろん,外来調剤において感じている閉塞感を打破する方法をお伝えします.

めちゃめちゃ難しい勉強をたくさんするだとか,長い時間机に向かって勉強をするだとか,そんなメソッドではありません.

投薬時に患者さんを前にした時に,どこに着目し,どのような評価をし,どういう手順でアセスメントを行い,薬物治療を行い,管理していくか.

在宅に限らず,薬剤師の調剤業務について何か新しい考えを感じ取っていただけるような講習にしたいと思っています.

皆さんの薬剤師人生を変える1日にしたいと思っています.

今後求められる薬剤師へと変わりたいあなたのご参加をお待ちしております.


日本在宅薬学会 エヴァンジェリスト
小林 友稀
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カテゴリ:
卒後1年目薬剤師の小林友稀です.

ぼくは日経DIのプレミアム版を定期購読していますが,1番好きな企画は「Inside Outside」です.日経DI 2月号のページも平成を通した薬剤師業務の変遷と今後の展望を語る素晴らしい内容でした.

平成の薬剤師史を振り返って変わった事が列挙されていますが,ぼくは平成30年に薬剤師になったばかりなので「変わった!」と実感したものはもちろん少ないです.

しかし学生時代にしっかりと薬剤師業界の行く末を見つめ,薬剤師としてこれからの世の中で活躍できる力を身に付けるために,母校が誇る先進的なカリキュラムで教育を受けてきたので,時事情勢についてある程度,自分なりに解釈して備えてきたつもりです.

やはり大きな意義を持つ変化は「情報提供義務」から「情報提供及び指導義務」と変わった点でしょうか.

「指導義務」が薬剤師法で定められたことで,投薬時に薬学的知見に基づく情報をただ与えるだけではなく,そこに薬学的観点から患者に必要な情報を“指導”する必要があると明確に示されました.


情報提供と指導にどんな違いがあるのか考えてみましょう.

情報提供とは,情報を提供するのですから,受け手側のことがあまり考慮されていません.極論ですが,薬情や口頭で情報を提供すればそれで終わりですから,イメージとしては「伝えることをしっかり伝えれば終わり」とも取れるわけです.

指導義務とは,情報を提供するだけでなく,受け手側がしっかり理解することまでを含みます.すなわち情報をただ示せばいい,ただ伝えればいい,という次元ではなくて,患者さんが分かる言葉,分かる表現で理解させることを示します.


そして最も大切なことは、そこに薬剤師の判断を入れる事です.


指導義務を負うということは薬物治療に責任を負うということです.いくつか判例でも示されていますし,何をいまさら当たり前のことを,と思う方がほとんどでしょうが,未だに疑義照会さえしていれば何かあっても医師のみに責任を押し付けて自分たちは免責されると思っている薬剤師がいるのも事実です.


法的に指導義務を背負った薬剤師は,自身の判断に基づいた薬学的知見から患者指導を行い,円滑に薬物治療を進める義務があります.何かあったときには例え疑義照会をしていたとしても,自分が責任をもてると判断できなければ調剤してはならないという法律に基づき,処方医と共同不法行為で有責になります.

そして当然のことながら監査印を押してその処方を通したということは「医師が行いたい薬物治療の有効性,安全性を私が担保して治療を開始します」という意味合いを持ちます.

そこに今度の調剤報酬改定や薬剤師法改正で盛り込まれる「薬剤交付時のみならず服用期間を通じて,薬学的管理を継続的に実施する」という内容も加味すると,

「医師が行いたい薬物治療の有効性,安全性を私が担保して治療を開始し,服用期間中の薬物治療に対しても責任を負う」という意味合いになります.


そういった対応が求められるなかで,薬剤師に必要な力は何でしょうか.

もちろん薬剤の知識は必須です.薬理,製剤,薬物動態などの知識は今まで通り必須なものであることは間違いありません.そしてその力は全医療職のなかで薬剤師が最も詳しい専門家として,これは今までの優秀な薬剤師の先生方の実績から十二分に世に示されてきました.


それでは薬物治療の開始から終わりまでの全期間を通して薬剤師が管理する義務を負うことになった今,必要とされる力にはどんなものがあるでしょうか.

それは「症状を診る力」「病態の評価をする力」です.

この日経DIでも「レジメンどころか疾患名すら分からず,処方医の考えが分からない」「正確な病名も検査値もわからないから踏み込んだ対応はできないのでは」と疑問視する声も出ていると取り上げられています.


「正確な病名も検査値もわからないから踏み込んだ対応はできない」では薬学的管理をしているとはいえません.


薬学的管理は当然のことながら薬剤師の判断で行うものです.疾患名が分からないなんて本来あってはならない事態で,それを公言しているのは「私は薬剤師として求められている業務ができません」と公言しているようなものです.

そんなことを言ったって,どうやって疾患名を判断すればいいのか分からないという方もいるでしょう.

かねてからお伝えしている通り,病歴と身体所見が正確に評価できれば世の疾患の8割は正診にたどり着くことができます.まして検査値も見れるようになってきましたし,なにより処方箋という医師からの大きな情報が手元にあるのですから,これらを組み合わせて判断すれば,よほど特殊で稀な疾患以外はすべて判断できます.

病歴も身体所見も検査値も処方箋も,それぞれ単独ではただのデータに過ぎないので意味を持ちません.それぞれを有機的に結び付けて考えることで,初めて疾患名や病態の程度が評価できるようになります.


つまりこれからの薬剤師に必要な力は,

①病歴,身体所見の取り方と評価の仕方

②各種検査データの評価の仕方

③処方箋の評価の仕方


という3つの力であると考えることができます.


薬剤師が患者に触れてはならないという思い込みが蔓延していた時代があったらしいです.薬剤師も聴診を行い,バイタルを取れなければ学部4年次のOSCEだって落ちてしまう現代では信じられない話です.

薬剤師が判断してはいけないと思っている人もいたようです.自分で判断できない専門職なんてあり得ない話ですよね.そんなのは専門職とは言いません.


処方監査を行うということは,その処方薬で治療することに薬剤師が責任を持つということです.

そして正しい治療薬になりうるかの判断,治療中の病態の変化を判断するためには,どうしたって疾患や病態の知識が必要ですよね.

つまり複数の異常所見をつなぎ合わせてその整合性をとことん考え,常に別診断の可能性を残しておくという考えが必要になります.

患者が薬剤師のところに来るのは医師が診断を下したあとになりますよね.それを監査する薬剤師が行うべきは,その診断に合致しない所見を見落とすことなく,下された診断にこじつけることなく,また診断と合致しない所見を見捨てる事なく,別診断の中に解消できないかを常に考えながら評価していくことです.

すなわち,鑑別診断を縦横に駆使して,病態を一元的に説明するにはどう判断したらよいかを考える力が必要です.


それが出来た上で初めて,その疾患に対して薬剤を投与した結果,どういった作用をもたらすのか(薬理学),どういった経路で投与すると薬剤が本来の力を十二分に発揮できるのか,また薬剤同士の相互作用はどうか(薬物動態学),望まれない作用を発現させないために注意することはなにか(副作用学),薬剤を投与した結果,疾患や症状はどのように変わったのか(薬物治療学)といった,今までも薬剤師が得意であった分野の知識を活かすことができます.


新しく何かが変わるときは自身を変える絶好のチャンスでもあります.

もう一度,薬剤師として自分は何ができるのか.どうしたらもっと患者さんのために動ける薬剤師になれるのかを考えてみてはいかがでしょうか.

現状に閉塞感を覚えているあなたこそ,それを打破したときの力は大きいと思います.

この機会にぜひ,一緒に本当に患者さんの役に立てる薬剤師を目指しませんか.
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卒後1年目薬剤師の小林友稀です.

今年の薬剤師国家試験は2/23と2/24なので3週間を切りましたね.

ぼくが国家試験を受けてからもう1年が経つのかと思うと恐ろしさを感じるほど時間の流れは早いもんだなと思います.

去年の今頃,何をしていたのかなとブログを振り返ってみると,

国試1週間前にして、領域別1周を達成しました!

まだ領域別すら1周していなかったんですね.これも恐ろしい話です.


最近の検索ワードで国試関連のところから,このブログにたどり着く方も多いみたいで,少しばかり応援の言葉を送りたいなと思ってこの記事を書いています.

薬剤師になろうと必死に頑張っているあなたへ,少しだけ勉強の息抜きにでも読んで頂ければ幸いです.まだ領域別が終わっていない方はこのブログを閉じて今すぐに領域別に取り掛かるべきです(笑)


あなたがこれから飛び込もうとしている薬剤師の世界はまさに激動の時代へ突入していく過渡期です.それが良い方に進むかどうかは,あなたの考え方次第です.

薬剤師の仕事って何でしょうか.

あなたは薬剤師になって何がしたいのでしょうか.


ぼくは高校時代の友達や,バイト友達などの医療と関係のない友達から,この1年何度も訊かれたことが「薬剤師ってどんな仕事なの?」という質問です.

みんな「薬剤師」という職業は知っています.でも薬剤師が何をしているのかは知りません.

法規の勉強をしているあなたなら分かるでしょうが,薬剤師法第24条に疑義照会義務があります.薬剤師法とは国家と薬剤師間で結ぶ公法上の義務であり,それは私法とは異なり義務が“権限”でもあるため,疑義照会義務は別名「監査権」と言います.

そして医師が薬物治療を行う際には必ず薬剤師の監査を受ける必要があると定められています.(医師法第22条の処方箋交付義務がそれにあたります)

薬剤師は医師の処方を監査する権限を持つ唯一の職種で,処方を監査することで最終的な薬物治療の判断を下し,その治療を開始する(または中断する)というのが根幹の仕事です.

僕は「薬剤師ってどんな仕事なの?」の答えには「薬で人を治すのが薬剤師の仕事だよ」と答えています.

きっとあなたも「病気や怪我で困っている人を助けたい」という思いで薬学部の6年にも渡る鬼のようなカリキュラムを乗り越えてきたのでしょう.


そして約3週間後には,いよいよ国試という最後の試練を乗り越えようとしています.

その最後の試練を乗り越えて,ほっと一息つけるのは4月までですよ.

世の中には“あなたの”助けを待っている患者さんが数えきれないほどたくさんいるからです.

おおげさな話でなく,本当にたくさんの患者さんがあなたの助けを待っています.

もしかしたら実習などで経験したかもしれませんが,世の中には信じられないほど多くの不適切処方がまかり通っています.

性質の悪い事に患者さんはそれに気づくことができません.

不味いレストランに行けば「なんだこの料理は酷い味だ!二度と来るか!」と避ける事ができるので,そういったところは淘汰されて減っていきます.

ところが医療というのは受け手側,つまり患者さんはその良し悪しが判断できないのです.

処方箋を見て「おお,この医者は僕の病状にまさにぴったりの薬を処方してくれたな!」なんて分かる患者さんはいないのです.

みんな言われるがまま処方された薬を飲んで,言われるがままに検査して,よっぽど酷いことがなければ何となく自分はちゃんと治療されているんだろうと思って過ごしてしまいます.

医療という分野で受益者選択による淘汰が生じにくいのはその高度性と複雑性にあります.

そういった質の悪い医療や,間違った医療から患者さんを助けられるのは、志を持って必死に勉強してきたあなたしかいません.

患者さんはあなたに処方を監査してもらい,適切な治療へ導いてもらうのを待っているのです.

かといって,あなたの考えが正しいとも限りません.

あなたはどう考えたって不適切処方だ!と思っていても,実はそれが患者さんにとっては良い選択であるケースもあります.

それが医療の難しいところ,クリアカットに判断できないところです.

そしてそれが医療の面白さです.

あなたは6年間必死に勉強してきました.

しかしそれは薬剤師になってから勉強するための基礎が終わったに過ぎません.算数が終わって,ようやく数学が始まるようなものです.

こんなことを言うと,必死に勉強してきてこれから薬剤師になる人に向かってなんて酷な話を…と思う方もいるかもしれません.

でも,薬剤師になるまでの勉強と違って,薬剤師になってからの勉強は比較できないくらい面白いですよ.

勉強すればするだけ目の前の患者さんが良くなる可能性がある勉強です.

患者さんの処方を変えて,その患者さんが良くなって「あなたの言うとおり薬を変えて良かった.これからも私の健康は全部あなたに任せるよ」と言われた時ほど,薬剤師になって良かったと思った事はありません.

きっと,薬剤師になってからも昔からの慣習であったり,薬局や病院の方針であったり,旧石器時代で頭の中が止まっている人種であったり,たくさんの壁があなたの前に立ちはだかることでしょう.

それでもあなたの「患者さんを助けるために薬剤師になるんだ!」という気持ちと「すぐに変えられなくても絶対に変えてやる」という強い気持ちを持っていれば必ず未来は開けます.

世の中の大きな流れに飲み込まれそうになったとき,1人で頑張っているような錯覚に陥ってくじけそうになった時は,是非ぼくが主催している研究会(総合診療薬学研究会公式サイト,またはメール→spgm@spgm-official.org)に相談して下さい.きっと力になれます.

こんだけ長文のブログ書いて,貴重な受験生の時間を奪って最後は研究会の紹介かよ!と突っ込まれても嫌なので,もう少しだけ続けますね笑


けっきょく,僕が国試受験を控えているあなたに言いたいのは,

薬剤師として,どう人生を過ごすかは自分次第だということです.

自分の人生は自分のものですから,別に流されるように思考停止で調剤していたとしても,ぼくは責めません.最低限でも薬剤師としてやるべきことをやっていればそれでいい.そういう考えだってあると思います.多様性の時代ですからね.否定はしません.

ぼくは単純にそれだけでこの先何十年も薬剤師をやるのはつまらないなと思っていて,しかも薬剤師としてやれること,出来ることがこんなにたくさんあるんだから,せっかく薬剤師なったからにはもっと人のためになることをしたい!と思って色々な活動をしています.

きっと皆さんの中にも,いっぱいいると思うんですよね.

6年制になって,より臨床を意識して世に飛び出してくる新人薬剤師が.1年前のぼくのように.

そして現状にがっかりして,せっかくのやる気を失くしてしまう新人薬剤師もいっぱいいると思います.

そんな勿体ない事ってないじゃないですか.

薬剤師として臨床能力をもっと身に付けたい!もっと患者さんのためになれる薬剤師になりたい!と思っている全ての薬剤師が活躍できるように,ぼくもこのブログや研究会からたくさん情報発信したり,たくさんの活動をしていきたいと思っています.

それには難しい勉強も,特別な能力も必要ないです.

必要なのは考え方をすこし変えること.

そして,自分の信念を曲げないこと.

たったこれだけで今までとは違った世界が見えてきます.


さて,こんなに長い記事を国試直前に最後まで読んでくれたあなたはきっと国試に受かる余裕のある人です.残り3週間弱ですが,体調に気を付けてしっかり決めてきてください.

本当に本当に応援しています.

いつか,どこかの学会や勉強会であなたに会えることを楽しみにしています.

ラストスパート頑張ってください!

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