ニセルゴリン(サアミオン®)の雑感
卒後6年目薬剤師の小林友稀です.ニセルゴリン(サアミオン®)ってどのようなイメージがありますか?
脳循環・代謝改善薬としては,ニセルゴリンの他に,イフェンプロジル(セロクラール®)もよく使用される薬剤と認識しています.他にはアデホス®も同分類ですが,めまいに対しての薬というイメージが強いです.
ガンマ-アミノ酪酸(ガンマロン®)やシチコリン(ニコリン®)メクロフェノキサート(ルシドリール®)は使用経験がないのでよく分かりません.
ニセルゴリン,イフェンプロジルはどちらも脳梗塞後遺症(イフェンプロジルは脳出血後遺症にも可)に伴う症状を改善する薬で,ニセルゴリンは慢性脳循環障害による意欲低下に対して,イフェンプロジルはめまいに対して使用する薬剤です.
どちらも脳梗塞の既往があれば,念のため入っている程度の認識でした.
先日,ポリファーマシーのため処方を整理しようと思い,状態が安定していると評価できる患者さん(施設入所)のニセルゴリンの中止を提案し,中止になった症例がありました.
しかし中止してすぐの頃から,夕方~夜間にかけて今までなかったせん妄が出現し,今まで率先して行っていた手伝いをしなくなり,トイレの場所や仕方が分からなくなるという精神症状がみられるようになったと施設職員から報告を受けました.
認知症の現病もあるため,認知症の進行も鑑別には挙がりますが,やはり症状出現の時期とニセルゴリン中止の時期がぴったりなので,ニセルゴリン中止の影響と判断して処方医と相談のうえ再開にしました.
ここで元通りになりましたならキレイな話のですが,今度は帰宅願望が強くでるようになりました.せん妄はなくなり,トイレの混乱の頻度も減りました.
評価が難しいですが,「ニセルゴリンってしっかり薬効があったんだ」と認識できた1例でした.
ニセルゴリン中止で認知症様の症状がみられたので,おそらく脳梗塞後の認知障害にも有効であったと考えられます.また抑うつ症状や自発性の低下にもおそらく有効だったと評価できます.
「意欲低下」意外にも認知症症状がある(または併存疾患として認知症がある)場合や,抑うつ症状がある(または併存にうつ病がある)場合や,もともと持っていた自発性が低下しているような症例ではニセルゴリンの導入は積極的に検討するのが良いかもしれません.
また薬剤師の目線からポリファーマシーの解除として“手もつけやすい”イメージがある薬かもしれませんが,他の薬剤と同様に中止前後の状態の変化には注意し,本当に中止しても大丈夫かの評価をしっかりすることが大切ですね.
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