「同効薬、納得の使い分け〜根拠からわかる! 症例でわかる!」を読んだ感想
卒後2年目薬剤師の小林友稀です.今回,勉強したのは同効薬の使い分けについて学べる参考書です.
研修医や若手医師をメインターゲットにした,レジデントノートという著名な雑誌の増刊号です.
医師向けの参考書ですので,詳細に使い分けを学ぶというよりざっくり薬の選択をする際にどう考えたら良いかを学ぶ,という点に重きを置かれています.
薬剤選択に関しては,私たち薬剤師がもっとも得意とするところです.
これは私見ではなく,この参考書でも随所に登場する見解です.
【総論】
“薬物体内動態を考慮した投与設計や,臓器機能に合わせた薬物選択については,薬剤師が得意とするところであるので,連携して処方を設計するとよい.”(P.18)
“処方薬の使用状況を適正に観察し,その結果・副作用を評価することが薬剤師の責務として,医薬品医療機器等法に記載される方向で,2019年度の法改正が進められている”(P.18)
【呼吸器】
“効果が実感でき,副作用が少なく,患者の満足度が高ければ,長く続けられるので,そのような薬剤を患者とともに見つけることが大切である.その際に,くり返しの吸入支援を行うが,その重要な担い手は薬剤師であり,病薬連携がポイントとなる”(P.68)
他に精神科の領域では,医科の「向精神薬調整連携加算」と調剤の「服用薬剤調整支援料」などの診療報酬で評価されているところにも触れ,薬剤師との連携が必要不可欠だと述べています.
若手医師向けの医学教育の中にも,薬剤師との関わりの重要性が謳われるようになったのは大変嬉しい事であるのと同時に,それだけの仕事をこなす覚悟が必要なんだなと,改めて感じることができます.
すこし脱線しましたが,「1疾患1治療薬」の時代から「1治療薬多疾患」へと治療の歴史が進んできて,今後ますます薬剤選択は複雑かつ重要性を担う業務になっていきます.
そんな中で,医療界から「薬剤選択のプロフェッショナル」としてその役割を期待される薬剤師は,患者さんに合った薬剤をどう選ぶかという知識は,必ず勉強しておく必要があります.
例えば,SGLT2阻害薬はその機序から,高齢者の脱水がフォーカスされ,一気に慎重論が広まりました.
しかしその一方で,糖尿病性腎障害や心不全への改善効果も認められ,肥満改善,尿酸値低下などとともに多面的な作用が認められつつあり,再評価の声もあがっています.
そういった内容のエビデンスは,ランダム化比較試験やシステマティックレビューなどの,信頼性の高い情報に基づいて作成されますが,それもあくまで集団としての結果であり,目の前の患者にスライドして適応できるわけではありません.
そのため,目の前の患者の疾患,臓器機能,生活習慣など,総合的な視点から薬剤選択を行う必要があります.
本書は,薬剤選択の力を身につけるための入門書的な位置づけとなっています.
これで一通り考え方を学んだ後は,それぞれ各論を取り扱っている専門書で勉強するのが最も効率の良い勉強法かなと思います.
薬理や薬物治療の講義が始まったばかりの薬学生にもオススメできるほど丁寧に書いてある1冊です.
これは素晴らしい良書でした.
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